池井戸潤、『民王』11年ぶり新作が売り上げ1位に 文芸書ランキングは続編だらけ?

池井戸潤、『民王』11年ぶり新作が1位に

 そんななか、異彩を放っているのが10位 『純猥談 私もただの女の子なんだ』。衝撃的なタイトルで話題をさらった『純猥談 一度寝ただけの女になりたくなかった』の第2弾で、シリーズ累計12万部を突破。どちらも〈できれば一生共感したくなかった、知らない誰かの恋愛体験談。5分で切ないショートストーリー〉というコンセプトは同じ。読んでみると性愛の香りが満ちているのにどこかピュアな気持ちにさせられる不思議な作品である。

 純猥談の発起人は佐伯ポインティ。2018年に日本初の完全会員制「猥談バー」をオープンした元マンガ編集者で、Twitterのフォロワー数は24万人超、YouTube「佐伯ポインティのwaidanTV」のチャンネル登録者数は73.5万人(2021年10月時点)。実店舗だけでなく、インターネット上でも読者の体験談を集めているが、タイトルに反してそこに猥雑な雰囲気は、あまりない。理由のひとつは佐伯がいつも朗らかで笑顔、どんな体験も笑顔で受けとめ、ときに愛あるツッコミをまじえていくスタイルを貫いているから、そして、エロのハードルがさがることで、深刻な悩みを抱いている人たちも「これでも大丈夫なんだ」とほっとできるからではないだろうか。

 書籍のほうはインターネット上のコンテンツに比べ、しっとりした文章で、ときに痛みや後悔を喚起させるつくりになっているが、恋愛の傷を癒すのにはおそらく、笑い飛ばしてネタにしてしまうことと、どっぷり感情に浸りきることの両方が必要なのだろう。ちなみにネット上には前作に引き続き、同タイトルの短編映画も公開されている。文字と映像、両方の視点から楽しめる新しいコンテンツの誕生として、注目したい。

 なお、唯一の単発作品は7位の伊坂幸太郎『ペッパーズ・ゴースト』で、1年半ぶりの新刊にして、作家生活20周年超の集大成となる一題エンターテインメントと銘打たれている。〈今回は、得意パターン全部乗せなんですよね。自分の家の冷蔵庫にあるものを全部使いました、という感じで(笑)。〉(公式サイトより)と伊坂自身が述べる本作にもぜひ注目を。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる