池井戸潤、『民王』11年ぶり新作が売り上げ1位に 文芸書ランキングは続編だらけ?

池井戸潤、『民王』11年ぶり新作が1位に

週間ベストセラー【単行本 文芸書ランキング】(10月5日トーハン調べ)

1位 『民王 シベリアの陰謀』 池井戸潤/著 KADOKAWA
2位 『月が導く異世界道中 17』 あずみ圭/〔著〕 アルファポリス
3位 『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2』 ブレイディみかこ/著 新潮社
4位 『異世界のんびり農家 11』 内藤騎之介/著 KADOKAWA
5位 『透明な螺旋 』 東野圭吾/著 文藝春秋
6位 『九十八歳。戦いやまず日は暮れず』 佐藤愛子/著 小学館
7位 『ペッパーズ・ゴースト』 伊坂幸太郎/著 朝日新聞出版
8位 『さよならも言えないうちに』 川口俊和/著 サンマーク出版
9位 『アラフォー賢者の異世界生活日記 15』 寿安清/著 KADOKAWA
10位 『純猥談 私もただの女の子なんだ』 純猥談編集部/編 河出書房新社

 10月第一週の文芸書週間ランキング、第1位は、2015年にドラマ化された池井戸潤『民王』の、なんと11年ぶりの続編である。『民王』は、あることがきっかけで、内閣総理大臣の武藤泰山と、息子で大学生の翔の人格が入れ替わり、国会での漢字読み間違いや大臣の泥酔会見などを引き起こしてしまうという、風刺のきいた社会派コメディ。最近では小説野性時代新人賞を受賞した君嶋彼方『君の顔では泣けない』が話題だが、入れ替わりモノは小説における人気ジャンルのひとつ。2015年には遠藤憲一&菅田将暉主演でドラマ化され、あまりの人気に次々とスピンオフドラマが展開されるなど、話題を呼んだ。

 続編となる『民王 シベリアの陰謀』は、誰も入れ替わったりしない。第二次内閣を発足させた武藤泰山が指名した環境大臣が、発症すると凶暴化する謎のウイルスに冒されてしまうのだ。急速な感染拡大に緊急事態宣言を発令するなど、泰山が対応に追われている一方、息子の翔は「狼男化」した教授に襲われる……。不安が吹き荒れる世間では、いわゆる陰謀論が支持を集めやすいのはなぜなのか? など、やはり時勢を反映したテーマがぎっしり詰まった本作。

 〈今回の作品の読み方は読者にゆだねているので、できるだけ先入観を与えないように、インタビューもほとんど受けず、版元にもあまり宣伝しないでくれと釘をさしました〉と池井戸はインタビューで答えているが(「WEB好書好日」より)、それなのに堂々の1位獲得はさすがである。コメディタッチなので思わず笑ってしまう部分はありつつも、ふとした瞬間にはっと冷や水を浴びせられる、池井戸潤ならではの筆致を存分に味わってほしい。

 『民王』を筆頭に、今月は10作中9作が続編モノなので、シリーズタイトルがついていないものをここでは紹介しておこう。先月からランクインし続けている『透明な螺旋』は、東野圭吾ガリレオシリーズ。『九十八歳。戦いやまず日は暮れず』は、2016年に刊行され130万部を突破した『九十歳。何がめでたい』から続く佐藤愛子のエッセイシリーズ。『さよならも言えないうちに』は累計130万部を突破したシリーズで、第1作『コーヒーが冷めないうちに』は有村架純主演で映画化もされたので記憶に残っている人も多いだろう。

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