『僕のヒーローアカデミア』内通者の正体は? 張り巡らされた伏線から考察
※本稿は『僕のヒーローアカデミア』のネタバレを含みます。
累計発行部数は5,000万部を突破し、劇場版第3弾も絶賛公開中の『僕のヒーローアカデミア』。本誌掲載の原作も最終章に突入し、クライマックス直前の盛り上がりを見せる中で、作中には無視できない伏線がある。それはヒーロー側の情報を筒抜けにする“内通者”の存在だ。作品内では、雄英側に潜む内通者の存在が幾度となく指摘されていた。そこで本記事では「内通者がいる」とされる理由を改めて解説し、その正体について考察していく。
雄英高校内に内通者がいるとされる根拠は、作中で描かれた3度の情報漏洩だ。最初に怪しい動きが見えた、単行本2〜3巻で展開される「USJ襲撃事件」。A組が実習中のUSJを、死柄木率いる「敵(ヴィラン)連合」が襲撃する。そこで死柄木の側近である黒霧が「先日“頂いた”カリキュラムでは」と発言したのだ。これで内通者の存在が示唆され、次に起こった「林間学校襲撃」でも外部の人間が知るはずのない情報が漏洩する事態に陥る。これを受けたプレゼントマイクによって、作中で初めて「内通者」という言葉が登場した。そして林間学校襲撃の際に拉致された爆豪の救出作戦が、オール・フォー・ワンに筒抜けだったのが3回目の情報漏洩だった。
物語もクライマックスに近づき、遂に読者の頭に刷り込むように描かれてきたその存在も無視できなくなってきた。未だ正体が明かされる気配もない内通者だが、ファンの間では様々な考察がなされ、何人かの候補が挙がっている。
これまでその片鱗も見せていなかったものの、第319話にて有力候補として急浮上した人物がいる。それが“ギャップの男”でお馴染みA組13番の瀬呂範太だ。
瀬呂の内通者説が流れたきっかけは、デクの消息を掴むためエンデヴァーを雄英に呼び出した際の一コマである。そこで爆豪を筆頭にしたA組メンバーの熱弁を受けたエンデヴァーは、GPSの受信機を取り出してみせる。その受信機にいち早く反応し飛びついたのが、瀬呂だった。デクと関わりの薄い彼が汗を流しながら焦って飛び出すこの姿が不自然だと、ファンの間で話題を呼んだのだ。オール・フォー・ワンもデクの居場所は欲しいはず。このシーンは一見感動すら覚える場面のようにも見えるが、少し違った見方をすれば内通者をあぶり出す手掛かりになっているのかもしれない。
また意外な人物としては、雄英のトップである根津校長も内通者候補として名前が挙がっている。世間体などを考えれば、数々巻き起こった雄英襲撃事件の1番の被害者とも言える根津校長。そんな“ハイスペック”なネズミである彼には、人間に弄ばれてきた過去があった。そして何がきっかけでそんな人間を助ける側に回ったのかは、未だ明かされていない。オール・フォー・ワンは辛い過去から逃げた人物を、甘い言葉で悪路へ引き込む。また作中ではオール・フォー・ワンが「良い個性は雄英に集まる」と発言しており、相澤先生はヒーロー科入試が「つくづく合理性に欠ける」とも話していた。実際に相澤先生の親友である白雲朧が黒霧に改造された事件からも、敵連合が雄英生徒の個性に目を付けていたのは明らかだろう。優秀なヒーローを多数輩出した実績による、皮肉めいたオール・フォー・ワンの発言。しかし雄英がもともと良い個性を集めるために設立されたのであれば、その合理性に欠ける入試内容も肯ける。