『かげきしょうじょ!!』と『ライジング!』は“娘役”をどう描いた? 娘役像からの逸脱と男役優位に対する批評性

『かげきしょうじょ!!』と『ライジング!』は“娘役”をどう描いた?

 『ライジング!』には、氷室冴子によるオリジナルの劇中劇も多数登場し、そのクオリティの高さも読みどころのひとつである。なかでも作中で全幕描かれた「レディ・アンをさがして」は好評を博し、のちに作品として独立。角川文庫から刊行された。

 高師謙司脚本・演出という設定を取る「レディ・アンをさがして」は、『ローマの休日』を下敷きにしたラブストーリーで、主演の男役よりも祐紀が演じる王女アントワージュの方にスポットが当たる。娘役中心という挑戦的な作品に挑み、スターとしてのポジションを確立する祐紀の姿は、『ライジング!』におけるハイライトといえるだろう。藤田和子による美麗な作画とあわせて、歌劇ものの醍醐味を味わえる名場面だ。

 野島聖と仁科祐紀は、いずれも既存の価値観を問い直す強さを持った娘役であった。歌劇団をテーマにしたこれらの作品には、他にもそれぞれの強さを持った魅力的な人物が幾人も登場する。『かげきしょうじょ!!』と『ライジング!』をきっかけに、歌劇団ものの世界に触れてみてほしい。

■書籍情報
『かげきしょうじょ!!(1)』
斉木久美子 著
定価:660円(税込)
出版社:白泉社

『ライジング!』
氷室冴子原作・藤田和子作画
定価:462円(電子版/税込)
出版社:小学館

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