『怪獣8号』『怪獣自衛隊』……怪獣漫画がいま読まれる理由は? 恐怖や不安の象徴としての“怪獣”を考察
まず読むべきものは怪獣漫画
さて、『怪獣8号』と『怪獣自衛隊』の作者たちが、どこまで現実の出来事を作品に反映させようとしているのかは定かではないが、少なくとも私には、この2作に共通する「主人公のがんばりを見て、周りの人々がひとつになっていく」という展開は、コロナ禍のいま、地球上にいるすべての人々がどうあるべきかを示唆しているように思える。
誤解を恐れずにいわせてもらえば、「怪獣」とは、目に見えない恐怖や不安の象徴である。だとすれば、それに立ち向かうために必要なのは、仮定の問題が具現化した時にいつでも対応できるような豊かな想像力と、(日比野カフカや防人このえのように)偏見や既存の概念にとらわれず、「相手」のことを常に思いやることのできる広い心だろう。そう――パンデミックだの不況だので、何かと多くの人々が疑心暗鬼に陥りやすいこの時代、まず読むべきものは怪獣漫画である、というのはいささか強引な結論だろうか。
■書籍情報『怪獣8号』
松本直也 著
定価:528円(税込)
出版社:集英社
『怪獣自衛隊』
井上淳哉 著
企画協力:白土晴一
定価:726円(税込)
出版社:新潮社