2021年は女子サッカーの年に? 『さよなら私のクラマー』は新たな青春譚の傑作だ

『さよなら私のクラマー』が胸を熱くする

 2004年のアテネ五輪出場、2011年のワールドカップ優勝、2012年のロンドン五輪銀メダルに続いて、女子サッカーのできごとが歴史に刻まれる年があるとしたら、それは2021年になるだろう。9月にプロリーグのWEリーグがスタートするから。そして、『四月は君の嘘』の新川直司によるマンガ『さよなら私のクラマー』が、本編の完結とアニメ化を果たしたからだ。

 中学校では男子に混じってサッカーを続けてきた恩田希は、進学した埼玉県立蕨青南高校で女子サッカー部に入部する。やる気を見せない監督を嫌い上級生が抜け、弱体化したチームに恩田の他に加わったのが、中学時代に全国3位になりU-15日本女子代表にも呼ばれていた曽志崎緑や、圧倒的なスピードでピッチを切り裂く周防すみれといった才能たち。日本代表で澤穂希のような活躍をした能見奈緒子がコーチとして招かれたこともあって、弱小だったチームに変化が起こり始める。

 ヒグチアサの『おおきく振りかぶって』や武田綾乃の『響け!ユーフォニアム』で描かれるような、弱小チームが優れた才能と野心的な指導者を得て大躍進する設定の『さよなら私のクラマー』。ただし、選ばれた題材が女子サッカーということで、高校野球なら甲子園、吹奏楽なら全日本吹奏楽コンクールといった、一般にも知られた場所とは少し違った目標に向かい、選手たちが奮闘していくところが持ち味になっている。

 その目標とは、女子サッカーの魅力を広く知ってもらうことであり、超満員のスタジアムで試合をすることだ。男子ならJリーグや日本代表で当たり前になっていることが、女子サッカーの世界では叶わない夢になっている。そんな夢に向かって登場人物たちの誰もがサッカーに目一杯打ち込む姿が描かれていて、読むほどに女子サッカーを応援したくなる。

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