『葬送のフリーレン』なぜ大人気漫画に? 斬新な設定の中に光る、王道の面白さを考察

『葬送のフリーレン』なぜ人気?

 魔王を倒した勇者一行のエンドロールから始まる物語『葬送のフリーレン』。「マンガ大賞2021」で大賞に選ばれ、累計発行部数は350万部を突破(2021年7月24日時点)。注目を集める本作の5巻が7月16日に発売された。

 魔王討伐から50年以上の月日が流れ、勇者「ヒンメル」は死期を迎えてしまう。彼の葬儀に出席したのはパーティのひとりであり、1000年以上生きることができるエルフ族の「フリーレン」。彼女は人間の寿命は短いことを知っていたが、ヒンメルのことを知ろうとしなかったことを後悔し、涙を流す。そして第1話の終盤でフリーレンは人間を知るため再び旅へ出ることを決める。

 魔王を倒した勇者一行のその後を描くという物語の設定は、これまでの漫画作品にはなかったものであろう。

 しかし、旅の目的地が明確に存在し、旅を共にする仲間もいる。ときに登場人物同士の掛け合いから笑いが生まれたり、恋模様を感じさせる描写も登場する。敵となる魔族との戦闘シーンも描かれ、因縁の相手との再会を果たす場面などーー。読み進める程に、『葬送のフリーレン』は非常に王道的な少年漫画だと感じるのである。

 物語の始まり方の意外性もさることながら、本作はこれまでの少年漫画のフォーマットを忠実に守っているからこそ、これまでにない作品が多く世に出ている現代の読者から評価されているのではないのだろうか。ただ、他の少年漫画と比較すると、本作の特徴も浮かび上がってくる。

 例えば、登場人物が作中で使用する魔法の名称。「血を操る魔法(バルテーリエ)」や「模倣する魔法(エアファーゼン)」など、カタカナのルビが振られてはいるが、そのほとんどが日本語の文章として成り立つものばかりだ。そのためキャラクターの使用する魔法の効果を読み取ることが容易になる。

 また、第1話で人間を知るために一歩を踏み出したフリーレンの旅は、紆余曲折を経て、第7話で死者と対話したという記録が残る土地「魂の眠る地(オレオール)」を目的地にすることがようやく決まるのである。フリーレンがどのようなキャラクターであるかをある程度知ったうえで、旅の目的地や亡くなった勇者ヒンメルと話すという目標が明確に示される。故に読者も物語のゴールを自分ごととして捉えやすい。

 意外性のある物語の幕開けに加え、古くから受け継がれてきた少年漫画の大枠。そして現代の読者が読み易く、共感しやすくなる工夫が盛り込まれているからこそ、本作は多くの読者から支持を得ているのであろう。



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