二股ではなくどちらも本命? 斬新ラブコメ『カノジョも彼女』が描く、恋愛の新境地

『カノジョも彼女』が描く新境地

 ネオスタンダードラブコメ『カノジョも彼女』(講談社)が、2021年7月2日、ファン待望のアニメ第1話放送を迎えた。その斬新すぎる設定で連載直後から大きな話題となった本作は、まさにラブコメ漫画界全体を新境地へと導いた一作と言える。そこで本稿ではアニメ放送開始を記念し、『カノジョも彼女』の魅力や見所を改めて紹介していく。

 『アホガール』を世に輩出したヒロユキが、ラブコメ界に一石を投じる本作。ギャグ漫画を得意とする彼の持ち味である、軽快な掛け合いは『カノジョも彼女』でも健在だった。しかし本作が注目を浴びている理由は、それだけではない。

 主人公、高校1年生の向井直也は、その時、幸せの絶頂にいた。最近できたばかりの彼女である咲の浮気を心配する軽い言葉に、直也は驚愕し反省する。「こっそり浮気なんてしないと思われるようにより一層愛すよーー!!」と過剰に反応する直也に、逆に困惑する咲。直也は小学生の頃から告白し続け、やっとの思いで実らせた恋を、大切にしたかったのだ。咲も彼の変人とも思える真面目ぶりに狼狽えながらも、その気持ちをしっかりと受け止めている。

『カノジョも彼女(2)』

 直也が1人幸せを噛み締めていると、そこにある少女が現れた。髪を1つに結び華奢な体の可憐な少女、水瀬渚は突如直也に「あなたが好きです!」と告白をしたのだ。当然驚く直也だが、渚に彼女自身の評価を問われると、その行き過ぎた真面目さからつい本音で褒めてしまう。そして「めちゃくちゃ魅力的だ!!」とまで言ってしまった直也は、遂に渚から禁断の質問をぶつけられる。

「付き合って…もらえますか……?」

 ハッとしながら、真実を伝え告白を断る直也。しかし「また告白しに来ますね!」と笑った彼女の目に光る涙を、直也は見過ごせなかった。

「二股していいか…一緒に彼女に聞きに行かないか!?」

 特異なファンタジー設定でもない限り、「恋愛のパートナーはひとり」がわれわれの常識だ。しかし『カノジョも彼女』は第1話にして軽々とその壁を乗り越え、一躍話題作となった。一歩間違えれば暗く陰湿な雰囲気になってしまう、「二股」をテーマとした作品。それがなぜ少年誌で連載できるほど、明るい雰囲気を醸し出しているのか。その秘密は主人公である、直也のキャラ設定にある。

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