『サレブル』著者・セモトちかが語る、ドロドロの不倫劇を描いた理由 「人間の多面性を楽しんでもらいたい」
ーー『星になる前にキミと』では、大人の“純愛”を描いていたセモトさんが、『サレブル』では打って変わって“裏切り”をテーマにドロドロの不倫劇を描いていて驚きました。『サレブル』を書こうと思った理由は何だったのでしょうか?
セモト:元々ドラマや映画などで見る不倫モノが、エンターテイメントとして面白いなと思っていました。でも世の中にある不倫モノは“禁断の愛!”のようなロマンチックなモノが多くて、実際に不倫された側目線の、ロマンチックではない現実的なお話を描いてみたいなってずっと思っていました。
『サレブル』を読んだ男性読者さんから、「暢に感情移入しすぎて初めて知ったけど、サレタ側ってこんな苦しいんだね。『サレブル』で勉強して一生妻だけ愛します」というありがたいお声もいただきました。“サレタガワ”の痛みを知ってもらえれば、少しでも不倫したくなくなる人が増えるのかなと思っています。それがこの作品を描いた目的のひとつです。
ーー今まで“サレタガワ”と言えば妻の心情を描いたものがほとんどだったと思います。描くにあたって実際に取材もされたのでしょうか。
セモト:弁護士さんや、シタ側、サレタ側、男女問わずたくさんの方にお話を聞きました。もう時効と言って笑い話に昇華できている方からは、とても前向きな「強さ」も感じました。「不倫されて離婚した」だけが人の物語ではないと思うので、そのあたりも描いていきたいです。
ーー『サレブル』は愛する者に裏切られた人の気持ちがリアルに描かれ、自分ごとの様に苦しくなるときもあります。一方でどこかドロドロの不倫劇がコミカルに描かれているのも印象的で、藍子や和正の言動にイライラしながらも、そのぶっ飛んだ様にクスリと笑わされることもしばしば……。シリアスとコミカルのバランスが絶妙だなと思うのですが、セモトさん自身がシリアスになりすぎないように気をつけている点などはありますか?
セモト:実はとっても気をつけています! 感じとっていただけて嬉しいです。テーマがテーマなので、暗くなりすぎないように心がけています。やっぱり漫画はエンターテイメントなので、“面白い”は必須な気がしていて。あとは私自身、ふざけたがりなので……。こういう取材などの真面目な場でも、担当編集さんに「ふざけすぎです」とお母さんのように注意されちゃいます(笑)。
ーー(笑)。『サレブル』はタイトルも印象的ですが、どうやって決まったのでしょうか。
セモト:仮タイトルは『された側の夫』でした。サレオット。『◯◯の◯◯』ってタイトルのヒット漫画は多いですし、売れるジンクスがあるような気がしていて、ゲン担ぎに。次に主人公の名前を、私の大好きな千鳥のノブさんからもらって“のぶくん”にしようと、決めまして(ノブさん勝手にごめんなさい)。「された側ののぶくん……の、ブルー!! され、たがわのブルー! これだ! 主人公は田川のぶる!」とブワッとダジャレがひらめいて決めました(笑)。ブルーは好きな色でもあるので、気に入っています。
ーー先ほどキャラクターの作り方のお話がありましたが、『サレブル』には非の打ちどころがないイケメンの暢、いかにもチャラそうなのに何故かモテモテの和正、暢の良き相談相手であるたみくん、一見爽やかなイケメンだけど後に豹変する水瀬葵と、多種多様な男性キャラクターが登場します。セモトさんご自身はどのキャラクターに惹かれますか? また、和正のような男性に惹かれる藍子や、ともみの気持ちも理解できるところはありますか?
セモト:前作の『星になる前にキミと』の主役の原優助というキャラで、私の理想のタイプの男性像は吐き出したので、ぶっちゃけ『サレブル』には理想の男性はいません。作中で成長していく姿や、逆にいつまで経っても変われない姿など、色々お見せできればと思っています。
藍子とともみは、男性に依存して執着している部分も大きいので、女子あるあるだなと思いながら描いてます。ダメ男にズブズブになってる世の中の女の子たちの、反面教師になれば(笑)。
ーー「マンガMee」にはコメント欄があり、読者同士で感想を言い合って盛り上がれるのも一つの醍醐味だと思うのですが、セモトさんも読者の反応はチェックしていますか?
セモト:たまに見てます! 感想いただけて嬉しいです。いろんな意見があって然るべきですので、優しいコメントも厳しいコメントもなるべく受け止めようと思って見ています。ただ「(物語を今後)こうして欲しい」といったコメントに脳が影響されすぎないよう、気をつけて見るようにしています。
ーー最後にこれからドラマを観る方や、読者へのメッセージをお願いいたします。
セモト:読者の皆様の応援のおかげで、ドラマ化という夢が叶いました。感謝の気持ちでいっぱいです。皆様への恩返しは、これからもより一層努力して面白い漫画を生み出すことだと思っています! ドラマで初めて観る方は、『サレタガワのブルー』は割とクセの強いストーリーなので、イライラしたりモヤモヤしたりするかもしれませんが(笑)、こんな人たちもいるんだなぁと、人間の多面性を楽しんでもらいたいです。学びも多く散りばめていますので、タメになるドラマだと思います。時間の都合でドラマでは掘り下げられなかった部分もあるので、漫画も合わせて楽しんでくださると嬉しいです!
■書誌情報
『サレタガワのブルー』1~2巻(マーガレットコミックス)
※3、4巻が7月21日発売予定
著者:セモトちか
出版社:集英社
マンガMee「サレタガワのブルー」ページ:https://manga-mee.jp/trial_reading/sareta_001/trial_001.html
ドラマ公式サイト:https://www.mbs.jp/saretagawa-blue/