【ネタバレあり】『東京卍リベンジャーズ』は映画版も面白い! 原作へのリスペクト感じる、製作陣の工夫

映画『東京リベンジャーズ』原作との違い

 底辺の人生を送るフリーターが、ある事件をきっかけにタイムリープ能力を手に入れ、巨大な闇に立ち向かっていく映画作品『東京リベンジャーズ』。設定が中学生から高校生になっていたりと、要所要所に原作との相違点が見えたが、その中でも特筆すべきなのは3つの変更点についてだろう。

 まず1つ目が、軸となる武道のキャラ設定についてだ。原作では弱くても正義感の強いキャラ、ダサくてもカッコいいキャラとして描かれた武道。劇場版ではその彼のキャラ設定が、より濃く描かれていた。

 原作で武道が唯一キマッていたと言っても良い、公園で直人を助けるシーン。直人をカツアゲしていた男の1人を殴り飛ばし、割れたビール瓶を突きつける。それに恐怖した男達は足早に公園を後にした。しかし劇場版では直人を助けるためブランコから立ち上がった武道の後頭部を帰ってきたブランコが直撃し、彼はそのまま地面に沈む。武道のダサさが強調される仕様になっている。

 また『東京卍リベンジャーズ』では超重要事項である、小学生時代のヒナと武道の過去も、劇場版では大きく変更された。コンビニでバイトをしていたヒナは、柄の悪いチンピラに絡まれてしまう。そこに狂人のフリをした不良が現れ、チンピラはドン引きで退散した。そして「これしか助ける方法思いつかなくて」と照れる不良に、ヒナは優しい笑みを浮かべる。これが劇場版での武道とヒナの出会いだ。原作の無垢な少年時代の武道が放った言葉や言動に、様々な人物の人生が大きく動かされる流れ。そのストーリーはSF不良漫画の世界に、エッセンスとしてミステリー要素をプラスする。しかし2時間の映画にまとめると考えると、武道のキャラをダサいヒーローに徹底したのは最良の手段だったと言えるだろう。

 また『東京卍リベンジャーズ』の作中では、ドラケン死亡の引き金とされていた東京卍會の内部争い。それが劇場版では丸々カットされていた。

 映画『東京リベンジャーズ』は、「8・3抗争」までを軸としている。しかし「8・3抗争」では肝となる、内部分裂は起こらなかった。パーちんの傷害と逮捕が描かれなかったのだ。原作では愛美愛主の長内を刺し、自首を決意するパーちん。内部分裂はそのパーちんの処遇を巡る、マイキーとドラケンの意見違いによって起こる。しかし劇場版では、長内がマイキーを刺そうとするのをドラケンが阻止した段階で、1次決戦は一旦の決着となった。つまり劇場版では愛美愛主との最終決戦にて、パーちんが大暴れする姿が描かれているのだ。

 まさに幻と言える展開となった、この変更。もちろん原作の物語が、マイキーとドラケンの人柄も分かり、哀愁漂う良ストーリーだったのは言うまでも無い。しかしパーちんが最終決戦に参加し愛美愛主相手に拳を振るう姿は、イチ原作ファンとしてアツさを感じざるを得なかった。

 最後に紹介するのが、キヨマサvs武道の構図についてである。原作では武道の最初の天敵となったキヨマサだが、劇場版ではラスボスの立ち位置に君臨している。そしてキヨマサを敵として2時間で完結させるため、「キヨマサvs武道」の構図がより顕著になっていた。

 稀咲に唆されたキヨマサに刺されたドラケンを背負いながら、病院を目指す武道。それをキヨマサを含む一派が阻み、キヨマサが負けた後も武道を追い詰める。もうダメかと思われた大ピンチで、武道の古巣である溝中五人衆の仲間達が助けにやって来た。

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