『うらみちお兄さん』は現代人の救世主? 子どもドン引きな“大人の闇”に背中を押される理由

『うらみちお兄さん』は現代の救世主?

極限まで焦がした鍋の底みたいな目をした救世主

 子どもにもネガティブな感情を包み隠さないうらみちお兄さんは、大人としては望ましくないのかもしれない。しかし彼は、周りへの影響を考えてネガティブな本音をうまく吐き出せず生きづらさを感じている人たちの、よき代弁者、理解者となってくれる。彼が漏らす闇にクスリと笑えるのはきっと、「自分が普段思っていることをはっきりと言ってくれた」という快感と、「分かってくれる人がここにいる」という安心感があるからだ。

 もちろんこの快感や安心感は気休めであり、苦しみの根本的解決にはならないだろう。ただ本作で得られる一時の安らぎには、気心の知れた仲間と「しんどいよね」「やってられないよね」と語り合って、心が少し軽くなるのと似たものがあると思うのだ。

 『うらみちお兄さん』は、理不尽な世界で一生懸命生きる人たちにとっての、一時的な休憩・避難場所のような一冊だ。他に類を見ない“極限まで焦がした鍋の底みたいな目をした救世主”はきっと、読者の「しんどい」「辛い」も一緒に吐き出し、笑いに昇華してくれる。

■クリス
福岡県在住のフリーライター。企業の採用やPRコンテンツ記事を中心に執筆。ブログでは、趣味のアニメや漫画の感想文を書いている。ブログTwitter

■書籍情報
『うらみちお兄さん(6)』
久世岳 著
価格:897円(税込)
出版社:一迅社

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「漫画」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる