「27クラブ」の真相に迫る『才能のあるヤツはなぜ27歳で死んでしまうのか?』 ジーン・シモンズの静かな訴えとは?
ザ・ローリング・ストーンズの創始者であるブライアン・ジョーンズ、ロックギターに大いなる変革をもらたせたジミ・ヘンドリックス、名作『パール』で知られる伝説的女性ロックシンガー、ジャニス・ジョプリン、90年代にグランジロックの一大ムーブメントを巻き起こしたカート・コベイン、00年代のネオソウルの潮流を生み出したエイミー・ワインハウス。ポップミュージック史に名を刻む彼女ら、彼らの共通点は、27才でこの世を去っていること。そう、「27クラブ」のメンバーたちだ。
27才で逝去したアーティストを括った「27クラブ」が一般的に広まったのはおそらく、94年にカート・コベインが死去したときだろう。彼のあまりにも痛ましい死を、70年代に死を遂げたアーティストたちーーブライアン、ジミ、ジャニス、そして、ザ・ドアーズのボーカリスト、ジム・モリスンーーと関連付けたのが、そのきっかけだ。さらにエイミーが亡くなったことで、「27クラブ」は大きな意味を持ち始めた。
創作の苦しみと経済的な成功のギャップ、セレブ/スターとして常に注目されるストレス、精神的な不調からドラッグやアルコールに溺れ、若くして死を手繰り寄せてしまうアーティストたちの存在は、カウンターカルチャーに興味を持つ人間にとって、奇妙な憧れとともに語られてきた。
“ドント・トラスト・オーバー30”という言葉もそうだが、20代のうちに名声を得て、華々しく散ってしまうことこそが、ロックアーティストの理想であるーーきわめて残念なことだが、一部の音楽ファンの間にそんな捉え方があったのは事実だろう。
ともすればアーティストの非業の死を美化してしまう風潮を真っ向から否定し、「27クラブ」に名を連ねる人々の人生を丁寧に綴ることで、本当の死の原因に迫ったのが本書『才能のあるヤツはなぜ27歳で死んでしまうのか?』(原題『27: The Legend and Mythology of the 27 Club』)。著者はジーン・シモンズ。70年代から世界の第一線で活動を続けるロックバンド・KISSのフロントマンだ。
ドラッグやセックスに興じ、絶頂期に永眠してしまったアーティストを“カッコイイ”と称賛する傾向に対し、以前からはっきりと異を唱えていたジーン・シモンズ(彼自身、アルコールやドラッグを一切やらないことを公言している)。
本書でも彼は、その姿勢をしっかりと貫き、亡くなったアーティストを美化や賛美せず、あくまでも客観的に、ときに冷徹とも思える筆致でその軌跡を描いていく。軸になっているのは「音楽産業の内外で活躍して27歳で世を去ったさまざまな文化的存在を語り、理解の道筋を示し」、「そういった若者たちにどんな力がかかり、どうやって彼らが道をたどったのか推察」する真摯な試みだ。