「ヤンキーなのに優しい」のギャップはずるい? 『自転車屋さんの高橋くん』の抗いがたい魅力

『自転車屋さんの高橋くん』の魅力

優しくするのは自分が優しくしたいから

 高橋くんが好きな子にだけ優しいタイプだったらまた違ってくるのだが、誰にだって優しい。自分に攻撃してこなければ、ではあるが。ベタに荷物を持っているおばあさんに手を貸してあげる、ということをサラッとやってのける。中には、おばあさんが大変そうなのも気がつかない人もいるだろうし、気がついても申し出を断られたら恥ずかしいと思う人もいるだろう。逆に手を貸したことで周りからよく見られたいという人もいるはずだ。

 でも高橋くんが助ける理由は「目の前に困っている人がいたから」。朋子がセクハラ上司に絡まれていたときは、上司を断罪するのではなく、朋子を助ける。好きだから好きっていうし、嫌いだったら嫌いだって言う。

 人の気持ちはシンプルなのに、大半の人はその気持ちに理由をつける。理由をつけるから、警戒もしてしまう。ネガティブな朋子も「良いように利用されているのではないか」と不安に思う。けれど、高橋くんは嘘をつかない。それを知ったから、朋子は救われた。シンプルな気持ちは人を救う。

■書誌情報
『自転車屋さんの高橋くん』1〜3巻発売中(torch comics)
著者:松虫あられ
出版社:リイド社

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