女子高校生がキャンプをするだけの漫画『ゆるキャン△』が大ヒットした理由とは? 人気のポイントを考察

日常の地続きにある『ゆるキャン△』の魅力

 「まんがタイムきららフォワード」にて2015年から2019年まで連載され、現在は漫画配信サイト「COMIC FUZ」にて連載中の『ゆるキャン△』(あfろ・著)。

 2021年1月には単行本の累計発行部数は500万部を突破し、今年に入ってアニメ、ドラマ共に第2期がオンエアされた。2022年には映画化も決定しており、これだけでその人気をうかがい知ることができる。

 改めて、そんな『ゆるキャン△』の魅力に迫ってみたい。

キャンプをする、それだけ

 どんなストーリーか。女子高校生がキャンプをする話である。それもガッツリとサバイバル! というものではなく、自分たちができる、行ける範囲で、無理せずに。タイトルの通り「ゆる」い。

 主人公のひとりである志摩リンはソロキャンプが好きでスクーターであちこちへと出かける。クールでマイペースだ。各務原なでしこは、遭難しかけたところをソロキャンプ中のリンに助けられたことがきっかけでキャンプに興味を持ち、野外活動サークルに入部する。

 基本はリンがソロキャンプに行ったり、なでしこが初キャンプに挑戦したり、という話が続く。キャンプ初心者が見ても、キャンプに抱く疑問はだいたいなでしこと一緒だし、その疑問にリンが答えてくれるので、なんとなく自分がキャンプをしているような没入感がある。

シンプルに「キャンプがしたい」と思わせてくれる

 テントをたてるのも大変だし、焚火だって思うように火がついてくれない。ごはんだっておいしくできるかどうかわからない。彼女たちは冬キャンプをすることが多いので、寒さに苦しめられていることだってある。それでも読んでいるとキャンプがしたくなってくるのは、達成感が得たいからかもしれない。

 家にいれば、ガスコンロで沸かしたお湯を注げばできるカップラーメンも、キャンプで食べようと思えば大変だ。リンは初めての焚火でカップラーメンを食べているが、そのおいしそうなことと言ったら!

 キャンプに出掛けて、観光地を巡る姿も良い。旅番組を見ていれば似たような感覚が味わえるのではないか、と思うかもしれないが、女子高生って「キャンプ地」に行くのも一苦労なのだ。わざわざたどり着く面倒くささ、わざわざ不便なところで見るからこその感動。そういったものがエンターテイメント感を高めてくれる。

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