『よつばと!』が時代を超えて愛され続ける理由 “今を全力で生きる”よつばの18年間

『よつばと!』が愛され続けている理由

 よつばという名の女の子が、一緒に暮らすとーちゃんや、隣に住んでいる風香に恵那にあさぎの三姉妹たちと重ねてゆく毎日を、淡々と描いて人気のあずまきよひこ『よつばと!』(KADOKAWA刊)の最新15巻が発売された。

 派手なアクションも、ドラマチックな展開もない漫画なのに、読むと癒やされ、泣けて嬉しい気持ちにさせられるのはなぜなのか。それは『よつばと!』が、毎日を全力で生きるよつばの姿を描き続けているからだ。

 10年前の2011年3月8日、東京・渋谷にあるギャラリーで「よつばと10年1日展」という展覧会が開幕した。『あずまんが大王』や『よつばと!』の10年分の日めくりカレンダーが貼られ、『よつばと!』の原画も飾られた部屋で、既に連載開始から8年も経っていながら、最初の頃と変わらず元気いっぱいの毎日を送り続けるよつばの姿に、ホッとさせられた。

 その3日後、展覧会場は東日本大震災に見舞われ、立っていたダンボーも大いに揺れた。中止となった展覧会は夏に再度の開催となったが、震災の以前と以後とでは暮らす街の雰囲気にも、暮らしている人の心にも違いが生じていた。そこから10年が経つ間に、オリンピックの開催に向けて街の景色は大きく変貌し、2020年からはコロナ禍によって仕事のしかたや生き方も変わった。

 十年一日とはいかず揺れ動き、気分も沈みがちの世界。そこに登場した『よつばと! 15』を手に取った人は、十年一日のごとく変わらない、よつばととーちゃんと周囲の人たちの日常に心を穏やかにさせられたはずだ。

 やんだの強烈なプッシュでミキサーを買う第99話「よつばとバナナジュース」では、ミキサーで作ったバナナジュースを飲んで、「せかいいちおいしい」というよつばの表情に嬉しさを覚える。第14巻で家にやってきた車を出し、恵那やみうらちゃんも誘って、よつばがとーちゃんと行った海岸で石を拾う第100話「よつばといし」では、宝石でも貴石でもない石ころに目を輝かせるよつばを微笑ましく思う。

 風香としまうーが勉強している部屋に飛び込み、いっしょに勉強をしたり折り紙をしたりする第101話「よつばとしけんべんきょう」。恵那が絵の具で絵を描いている姿を羨ましく思って、とーちゃんに頼んで絵の具を買いに行く第102話「よつばとえのぐ」。ともすれば邪魔で迷惑だと思える振る舞いなのに、少しもそう感じないのは、よつばが全力で勉強や折り紙を楽しみ、全力で絵を描こうとしている姿に愛おしさを覚えてしまうからだ。全力で生きている子供に、勝てる世界なんてものは存在しないのだ。

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