女子高校生がキャンプをするだけの漫画『ゆるキャン△』が大ヒットした理由とは? 人気のポイントを考察

日常の地続きにある『ゆるキャン△』の魅力

「高校生」ということに意味がある

 なぜキャンプをする主人公たちは高校生なのだろう。高校生はちょっと不自由だ。お金も自由にならないし、移動だってままならない。キャンプにはお金がかかる。キャンプ用品を買うためにお金を貯める。自分が何が好きなのか分からないから、キャンプのスタイルも確立されていない。

 リンはなでしこと出会うまでソロキャンプしかしたことがなかったが、やがて友人たちとのキャンプもするようになる。逆にキャンプ初心者のなでしこもリンに触発されてソロキャンプに挑戦する。試してみて、「私はこれがいい」「これもいいけど、一番好きなのはこっち」と自分の個性を探り掴み取っていく姿が眩しい。

 また、彼女たちは自分の意見を押し付けない。相手がそうしたいというなら、と尊重する。仲が良いからと言って全部一緒に行動しなければならないということはなく、そんな自立しようとしている気持ちが垣間見えるのも良いのだ。

 「ああすればよかった」という後悔は、自分が選択したものだったら納得できるけど、誰かに強いられたものだと軋轢が生まれる。そのことを彼女たちが分かっているのかどうかはわからないけれど、読者にとってはそんな人間関係の緊張感がないのはなんともハッピーだ。

 何より、今の「なんとなく生きづらい」があふれる時代の中でホッと気を抜けるゆるさと、キャンプという自然の中で生きる行為を描くことで多くの人にとっての憩いの場となっているのかもしれない。

■書誌情報
『ゆるキャン△』1〜12巻発売中(まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ)
著者:あfろ
出版社:芳文社

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