『家庭教師ヒットマンREBORN!』なぜ女性人気が高い? 主人公・ツナの“ヒーロー”らしからぬ魅力

『REBORN!』学園コメディ×バトルの魅力

 本作はキャラクターの内面もまた魅力的だ。

 『ワンピース』の主人公「ルフィ」には海賊王、『NARUTO』の主人公「うずまきナルト」には先代を越える忍者になるという目標がある。しかしツナはどうだろう。「ボンゴレファミリーの10代目ボスになる」という作品のゴールは示されているが、本人は10代目になることに対し否定的である。同級生からは「ダメツナ」と呼ばれ自信を持てない姿なども、他のジャンプ作品の主人公とは対照的だ。

『家庭教師ヒットマンREBORN!』9巻(集英社)

 そんなツナであるが、11巻「標的98 20年後のランボ」ではボロボロになったランボを助けるために戦場へ身を乗り出し、16巻「標的143 覚悟」では未知の敵に怯える京子ちゃんを守るために、眉間にシワを寄せ、祈るように拳をふるう。彼の戦うモチベーションはいつも「誰かを守るため」に集約されるのである。本作ではツナを10代目として慕う「獄寺隼人」や愛校心を抱く「雲雀恭弥」など、自身の愛するものを守るために戦いに挑むキャラクターが非常に多い。

 『呪術廻戦』の主人公「虎杖悠仁」も「人を助けろ」という祖父の遺言が戦いに身を投じる動機となっている。他者を思う気持ちが原動力となっているキャラクターの優しさが、多くの人の共感を誘う。

 また学校が舞台であることも本作の魅力のひとつである。バレンタインデーに獄寺らが多くの女の子からチョコレートをプレゼントされる様子や、ツナたちが揃いプールや夏祭りに出かけ親しげにする様子も描かれる。

 激しいバトルシーンや学校生活など、多様なシチュエーションからキャラクターの様々な一面を垣間見ることができる。特に登場人物が学校で過ごす日常を覗くことができるのは、学園コメディ漫画としての側面をもつ本作の大きな特徴だ。魅力的な登場人物の様々な一面を知ることで彼らへの共感をより感じられる点が、長きにわたり作品、そしてキャラクターが愛され続ける理由なのだろう。

■あんどうまこと
フリーライターとして漫画のコラムや書評を中心に執筆。ライターの他に寮母なども務める。Twitter(https://twitter.com/andou_ryoubo)

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「書評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる