『ONE PIECE』は「差別と革命」を描く物語だーー壮大なスケールの“新世界編”、その行く末は?

『ONE PIECE』は「差別と革命」を描く

 『週刊少年ジャンプ』で連載されている尾田栄一郎の『ONE PIECE』(集英社)は、海賊王ゴールド・ロジャーが残した、「ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)」をめぐって、海賊達がしのぎを削る「大海賊時代」を舞台にした海洋冒険ファンタジーだ。

 ルフィが率いる麦わら海賊団は、イーストブルー(東の海)から旅立ち、グランドライン(偉大な航路)で様々な冒険を繰り広げる。しかし、マリンフォワード頂上決戦で、自分の限界に直面したルフィは冒険を一時中断。ゴールド・ロジャーの片腕だった冥王シルバーズ・レイリーの元で“覇気”と呼ばれる力を使いこなすための修行をおこなう。

以下、ネタバレあり

 それから2年後。ルフィ、ゾロ、ナミ、ウソップ、サンジ、チョッパー、ロビン、フランキー、ブルックたち麦わら海賊団の仲間たちが、シャポンティ島に集結。潜水用のコーティングが施されたサウザンドサニー号に乗って、深海1万メートルの海底にある魚人島へと旅立つ。

 魚人島は、リュウグウ王国の海神ネプチューンによって統治されていたが、ホーディ・ジョーンズ率いる新魚人海賊団がフライング海賊団とともに、王国の破壊を目論んでいた。

 一方、ルフィたちは「海の森」で、海侠のジンベエから「魚人たちの虐げられてきた歴史」について聞かされる。かつて、ジンベエはフィッシャー・タイガーを船長とするタイヨウの海賊団のクルーだった。「奴隷解放の英雄」と呼ばれるタイガーは元奴隷の魚人たちと共にタイヨウの海賊団を結成し、世界政府と戦っていた。そのため、「人間と魚人の友好」を目指すリュウグウ国のオトヒメ王妃の考えとぶつかっていた。

 そんなある日、タイガーは、奴隷として扱われていた11歳の人間・コアラを故郷の島に送り届けることになる。コアラとの交流で人間とも理解し合えるのではないかと思ったタイガーだったが、島の人間に通報され海軍に襲撃される。何とか逃げ出したタイガーだったが、自分たちを裏切った人間に絶望し、船上で命を落とす。

 その後、ジンベエはタイガーの後を継いで新しい船長となる。やがて2億5千万ベリーの賞金首となったジンベエは世界政府公認の海賊・王下七部海に誘われる。魚人の立場が良くなると考えたジンベエはその誘いを受けると同時に、海軍に捕まった仲間のアーロンを釈放させる。しかしアーロンは「人間の戌(イヌ)に成り下がった」とジンベエを非難。仲間を連れて海賊団を離脱する。

 アーロンは序盤に登場する冷酷な魚人だ。すでにシャボンディ諸島編で、魚人たちが差別される姿が描かれており、差別されるマイノリティとしての魚人と、世界を牛耳る世界貴族(天竜人)の存在が明示されていたのだが、この魚人島編において、かつて戦ったアーロンもまた、酷い差別を受けて人間を憎んでいたことが判明する。

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