爪切男×燃え殻が語る、悲喜こもごものアルバイト体験 「仕事が楽しいなんてアブノーマルな性癖ですよ」

爪切男×燃え殻が語る、悲喜こもごものアルバイト体験 「仕事が楽しいなんてアブノーマルな性癖ですよ」

 デビュー作『死にたい夜にかぎって』が話題となった作家・爪切男が2月から3カ月連続で新作エッセイを刊行している。2月24日には『もはや僕は人間じゃない』(中央公論新社)が、3月19日には『働きアリに花束を』(扶桑社)が発売された。4月26日には『クラスメイトの女子、全員好きでした』(集英社)も発売される予定だ。

 第1弾となる『もはや僕は人間じゃない』刊行の際は、当サイトにて歌舞伎町のゲイバー店員のカマたくとの対談をおこなった。(参考:爪切男×カマたくが語る、頑張りすぎない“中道”の生き方 「悩みがないことが、むしろ僕らの悩み(笑)」

 続く第2弾『働きアリに花束を』は、爪切男がこれまでに行ってきた数々の仕事を題材とした“お仕事エッセイ”だ。そこで今回は共に『週刊SPA!』で連載をしていた燃え殻との対談を実現。同じく扶桑社から『夢に迷って、タクシーを呼んだ』を3月21日に刊行した燃え殻は、爪切男とプライベートでも親交が深く、その来歴にも共通点が少なくないようだ。二人が体験した、衝撃のアルバイトとは? “働くこと”の悲喜こもごもが感じられる対談となった。(編集部)

日雇いのバイトは一期一会

爪切男

爪切男:日雇いバイトって集合のときから独特の雰囲気があって、派遣会社から「何時にどこそこの駅の改札に集合」と言われて行ってみると、明らかに陰鬱なムードが漂う集団がいるんです。特に目印とかないのに、すぐに「あの人たちだ」ってわかるというか。でも向こうからすれば、俺も同じぐらいどんよりした奴だったのかもしれない。陰鬱とか言って申し訳ないです。燃え殻さんはそういうバイトは経験しましたか?

燃え殻:そこまで無頼派な現場には行っていないんですけれど、倉庫に“人買い屋”みたいな人がやってくる日雇いはやっていましたね。その人が「今日はこの子とこの子」って選んで、そのまま連れて行かれて、引越しの手伝いとかするんです。1日3軒やって7000円くらいもらっていました。清掃とかは結構、好きでしたね。

爪切男:なんか世間が抱いている燃え殻さんのイメージと合わないかもしれないですね。燃え殻さんは夜中の3時にTwitterで「こんな夜は小沢健二を聞きたくなる」とかつぶやいてた男やん(笑)。

燃え殻:つぶやいてないよ! 嫌われちゃうから(笑)。

爪切男:いやいや、誰も嫌わないですよ、別に(笑)。燃え殻さんがそういうことつぶやくと俺は茶化したくなっちゃうだけ。羨ましいのかな。

燃え殻:(笑)。まあ、引っ越しもやっていましたけれど、エクレア工場の方がずっと長かったですね。カップラーメンのスープの封入とエクレアと、どっちの仕事が良いって聞かれて、エクレアの方がなんとなく女子っぽいから選んだんですけれど、現場に行ったらほとんどの従業員がブラジルの方で、ぜんぜん言葉が通じなかったです。だから私語なんてなくて、休憩室でも肩身が狭い。ところが、そういう環境だからこそ言葉が通じる日本人同士は仲良くなって、それが心地良くて数年に渡って続けてしまいました。結構バイトは長続きするタイプで、ビルの清掃も1年以上やっていたかな。

燃え殻

爪切男:あんまり接客業とかはやらなかったんですか?

燃え殻:接客業は1回もやったことがない。だって、怖い人が来そうじゃないですか。僕はそういうハプニング的なものに対応できないので。でも、円山町にあった旅館風のラブホテルの清掃はしていましたね。僕はペットを飼った経験がほとんどなくて、糞尿の始末をするということに慣れていなかったんですけれど、そのラブホテルで慣れました。ベッドの真ん中にドーンってしてあったり、ベッドの横のスタンドの下に隠してあったり、ときにはオカリナみたいなのがポツンと置かれていたり。そういう性癖の人が本当にいるんだなって。

爪切男:ことの最中に、興奮とともに出ちゃう人もいるらしいですね。腰を振りながらめちゃくちゃ出す人とか。もしかしたら片付けやすいようにまとめておいてくれたお客さんもいたかもしれませんね。

燃え殻:なるほど(笑)。まあ、そんな職場だから最初は嫌だったんですけれど、あの辺だといろいろな種類の人たちを見れるから楽しかったです。おじいさんとめちゃくちゃ若い子のカップルとか、興味が尽きなかったです。

爪切男:それは羨ましい。そうそう、ウンコの掃除は居酒屋のバイトで俺もやりましたね。臭いはするけれど、どこにもウンコが見当たらなくて、ハッと目の前の白い壁を見たら、ウンコで龍が天に昇っていくような模様が描いてあって(笑)。

燃え殻:本当にありますよね。「なんてアクロバティックな!」って驚くような場所にウンコ。僕が働いていた旅館では、天井にウンコが付いてたこともありました。ウンコでキャッチボールみたいなことをしていたのかな。一緒に働いていた女性に「なんでこんなことをするんですかね?」って聞いたら、「人には色々あるのよ」って答えが返ってきて。この状況でそんな名言みたいなこと言われても……って思ってました。

爪切男:(笑)。バイトはユニークな人たちとの出会いがたくさんあって、本当に一期一会だと思いますね。『働きアリに花束を』にも書いた仕事のできない双子との出会いとか、忘れられないです。漫画だと双子は最高のコンビネーションを見せてくれるような幻想があるのに、その子たちは、業者の人に「右に行っちゃダメだよ」って言われた矢先に、二人で同時に右に特攻していくような双子で。休憩時間に一緒に飯を食ったら、「俺たちはなんの取り柄もない双子なんだ」とか言い出すから、なんだか仲良くなっちゃいました。

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