爪切男×カマたくが語る、頑張りすぎない“中道”の生き方 「悩みがないことが、むしろ僕らの悩み(笑)」

爪切男×カマたくが語る、“中道”の生き方

 2018年の『死にたい夜にかぎって』で本格的に作家デビューした爪切男。珍しすぎる恋愛エピソードを綴った同作は、各所で話題となりテレビドラマ化もされた。そんな爪切男の新刊が3カ月連続で発行される。2月24日に『もはや僕は人間じゃない』(中央公論新社)、3月19日に『働きアリに花束を』(扶桑社)、4月26日に『クラスメイトの女子、全員好きでした』(集英社)。いずれも異なる版元からの発売という異例の展開である。その第1弾となる『もはや僕は人間じゃない』は、爪切男がパチンコ中毒のお坊さんと、オカマバーの店員に人生を救われる(?)エッセイで、帯には歌舞伎町のゲイバー店員のカマたくが「善も悪もない。正解も不正解もない。定義なんてしょうもない。」(一部抜粋)とコメントを寄せている。

爪切男『もはや僕は人間じゃない』(中央公論新社)

 カマたくは、Twitterにアップした動画がバズり、16年間売春をしていたという壮絶な過去を持つ人物だ。『頑張らなくても意外と死なないからざっくり生きてこ』、『お前のために生きてないから大丈夫です カマたくの人生ざっくり相談室』(ともにKADOKAWA)という著作も残しており、ツイッターのフォロワー数は約125万人。悩み相談にも舌鋒鋭い口調で答え、その親しみやすいキャラクターも愛されてきた。

 今回、リアルサウンド ブックでは爪切男とカマたくの対談を実現。『もはや僕は人間じゃない』への感想からはじまり、おたがいの人生観や、悩みについての考え方についてまで、ざっくばらんに語り合ってもらった。(土佐有明)

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爪切男×カマたく『もはや僕は人間じゃない』対談 Part.01

『もはや僕は人間じゃない』に共感

爪切男

カマたく:新刊の『もはや僕は人間じゃない』読ませて頂きました。登場するオカマバー店員のトリケラさんの考え方、「わかるー!」って感じで共感して、読んでいてすごくすっきりしました。読者の反応や評判はいかがですか?

爪切男:おかげ様で、いい感想をたくさんいただいています。でも僕、人の感想っていうのは自由だと思ってて、お金を出して買ってもらった時点でそれはもうその人の本なので。たとえばAmazonのレビューで星ひとつつけられても気にならないです。

カマたく:自分の半生も投影した作品のようですけど、本が出たこと、知り合いに言うのは恥ずかしい?

爪切男:めちゃめちゃ恥ずかしいです。2月から3カ月連続で本を出すことになっているんですけど、自分が作家だっていう感覚がいまだになくて。著作が本屋に並んでいても、なんだか他人事としか思えない……(苦笑)。

カマたく:この作品で、なにか思うところや伝えたいことがあったんですか?

爪切男:いやー、読者の方には申し訳ないんですが、実は「どうしてもこれを伝えたい!」っていうのはないんですよ。ただ、笑って喜んでもらえたらそれでいいです(笑)。

カマたく:わかるー。私も2冊本を出してるんですが、読んでくださった方が自由に受け取ってもらえれば、それでいいと思ってます。爪さんも私も作品にそこまで思い入れがないのかもしれませんね。もしかしたら、読者の皆さんよりも思い入れがない(笑)。「これとあれを伝えたい」、というのが基本的にない。

爪切男:僕も作家になるという夢はあったんですけど、それは1冊目の『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)を書いたことで昇華されたので。2冊目以降に関しては思い入れが全くない……とまでは言わないですけど、自然に生まれた感じですね。

カマたく:本を出して気づいたんですが、受け取る側がどうなのかって思ってくれるかっていうのが大事で、自分から何かを伝えるなんて、おこがましいですよね。

爪切男:1冊目で過去につきあった女性たちのことを書いたんですけど、ある人がネットで「爪切男はこんなこと書いているけど実はイケメンなんだろう」って書いていて。その時点ですぐ「顔出ししよう」とは思いました。その誤解だけは解きたいなと(笑)。どう読んでもらってもかまわないのですが、こういう丸みのあるおじさんが頑張った話だ、ということはわかってもらいたいです。家の目の前が小学校なんですけど、アパートの共有スペースで座ってタバコ吸っていると、登下校中の小学生たちが僕のことを「ゴブリン」って呼んでくるくらいですから。

カマたく:そのあだ名、絶対に学校中で広まってますよね(笑)。

爪切男:ですね。本を出していようが作家になろうが、どうせあだ名はゴブリン。だから、知りあいからは顔出さないほうが良かったんじゃない?とも言われますね。実は僕、行きつけのガールズバーでは無職で通してたんですよ。でも、この前「こいつ、本書いてるんだよ」って一緒にいた友達がポロっと言ったとたん、場の雰囲気が変わってしまったんです。僕がしゃべるとみんな神妙に聞き入るようになってしまって……。あと、2冊目、3冊目を出すことになった途端、みんなが僕のことを「先生」と呼ぶようになったんです。あれはなんとかしないと(笑)。

カマたく:私も最近は、顔を見せると周りの雰囲気が変わっちゃう。マスクとる前から「あれ?」と気づかれていて、マスクとったら「やっぱり! カマたくさんだ」って。ありがたいんですけど、それがすごく嫌で。もう、私なんてうんこみたいな扱いでいいのに(笑)。

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