大ヒットBL作品『ポルノグラファー』はなぜ三部作となったか? 過去と未来を描く必然性
ふたりで未来を描く続編
木島の自分への自信のなさは、1作目の未来を描く『續・ポルノグラファー プレイバック』でより顕著に見え始める。
想いは確かに通い合っているふたり。木島がつく嘘には嫉妬が混じるようになり、痴話喧嘩をするまでになった。にもかかわらず、木島は久住との関係を言葉にすることを避け、彼との未来も簡単には描こうとしない。そのせいですれ違いが起こる。
木島が久住とのこれからを言葉にしないのは過去に、窮地に追い込まれていた自分を信じてくれた大切な人との別れに心を痛めてきたからだ。『インディゴの気分』で彼は、心から尊敬した師匠・蒲生田郁夫(がもうだ いくお)の最期を看取っている。と同時期に想いを寄せていた城戸から、自分の存在が苦しみだと告げられている。
木島があえて大切な人との未来を描かないようにしていたのは、満たされた後の孤独の痛みを味わったのはもちろん、自分が相手の幸せの枷となることを恐れたからだろう。実際に続編『續・ポルノグラファー プレイバック』では、戻った実家で幸せそうな家族の中に入ることに不安を感じ逃げている。また久住にもはっきりと、つまずき続けて未来のない自分と一緒にいたがるのか分からないと言葉にしていた。
このように木島理生という作家は、こじれにこじれた、とても一筋縄ではいかない人間だ。その人間性は過去編『インディゴの気分』と未来編『續・ポルノグラファー プレイバック』もあわせて読むことで、ようやく理解できる構造になっている。そして彼の過去も未来も知ったうえで1作目『ポルノグラファー』のラストを振り返ると、“遠回し”なハッピーエンドがいかに「読者に委ねる」というだけのものではなく「木島らしい」という美学をも帯びていたのか、気付かされるのだ。
■クリス
福岡県在住のフリーライター。企業の採用やPRコンテンツ記事を中心に執筆。ブログでは、趣味のアニメや漫画の感想文を書いている。ブログ・Twitter。
■書籍情報
『ポルノグラファー』
価格:本体650円+税
丸木戸マキ 著
出版社:祥伝社
公式サイト
『インディゴの気分』
価格:本体680円+税
丸木戸マキ 著
出版社:祥伝社
公式サイト
『續・ポルノグラファー プレイバック』
価格:本体680円+税
丸木戸マキ 著
出版社:祥伝社
公式サイト