『SPY×FAMILY』、なぜ「ジャンプ+」の看板作品に? 異色のホームコメディに溢れる幸福感

『SPY×FAMILY』の幸福感

 昨年末、遠藤達哉の漫画『SPY×FAMILY』(集英社)の第6巻が発売された。本作は漫画アプリ「ジャンプ+」で配信されている人気漫画。物語は西国(ウェスタリス)から東国(オスタニア)に送り込まれたスパイの“黄昏”が、東国の大物政治家ドノバン・デズモンドに接触するために「家族を持つ」という異色のホームコメディ。

『SPY×FAMILY』2巻
アーニャ

 黄昏はデズモンドの息子が通う名門イーデン校に潜り込むため、精神科医のロイド・フォージャーとして生きることになる。そして、養子縁組制度で幼い少女・アーニャを引き取り、市役所で事務員として働くヨル・ブライアと偽装結婚。しかし、実はアーニャは心の声をきくことができる“エスパー”で、ヨルは〈いばら姫〉の名前で売国奴を暗殺する“殺し屋”だった。

 ロイド、アーニャ、ヨル。そして未来予知能力を持つ大型犬・ボンドを加えた3人と一匹の家族は、お互いの素性を隠して偽りの家族を演じていたが、次第に本当の家族のようになっていく。

 冷戦時代のヨーロッパを思わせる国を舞台にした物語は、シリアスとコメディのバランスが絶妙で、親しみやすいものとなっている。ロイドがスパイでヨルが殺し屋なので、アクション映画のような派手なバトルも多いが、中心にあるのは素性を隠した3人のホームドラマ的なほんわかとしたやりとり。

 遠藤達哉の絵はスタイリッシュで完成度が高く、一コマずつ見ても、独立したイラストとして楽しめるものとなっている。何よりカラー原稿の色彩がとても美しい。すでに「ジャンプ+」では人気看板作品となっており、単行本の売れ行きも好調。累計発行部数は6巻発売の時点で800万部を突破。ちなみに6巻の初版部数は100万部で、これは「ジャンプ+」のオリジナル連載作品では初の快挙だ。

 アニメ化等の他メディア展開が始まっていない時点でここまでの人気を獲得しているのは、漫画アプリという発表媒体が本誌に匹敵する影響力を持ち始めていることの象徴だが、何より『SPY×FAMILY』という作品に、幅広い読者を受け入れるポテンシャルがあるからである。

以下、ネタバレあり。



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