「ダンまち」「魔法科」新刊がワンツーでランクイン 両作の新展開やいかに?
小説『続・魔法科高校の劣等生 メイジアン・カンパニー1』は、『サクリファイス編/卒業編』の後、魔法師として世界最強クラスの力を持つ主人公の司波達也が、高校を卒業して魔法大学へと進んだ時間の上で、国家の敵や人類の敵といった分かりやすい相手とは違った存在との"戦い"に突入する。一国の軍隊を壊滅させられる達也のような、強大な力を持った魔法師を恐れ、警戒感を強める人類から起こる魔法師排斥の動き。それは、魔法適性はあっても実用レベルにはない人たちにも及んで、社会を分断し始めていた。
達也は動いた。一般社団法人メイジアン・カンパニーを立ち上げ、力の弱い魔法使いたちをメイジアンと呼んで救済しようとした。一方で、魔法師たちの権利のためには過激な行動も辞さない組織があって、達也の元に死角を送り込んできた。そこで見せる達也の振るまいは、人種や宗教の違いが差別や分断を生み、闘争へと至らせている現実の社会情勢に変革のヒントをもたらしそう。達成できれば妹の司波深雪ならずとも、「さすがはお兄さまです」と言って讃えたくなる。
アニメ化作品では、第2期が2021年1月から放送開始予定となっている伏瀬の原作小説最新刊『転生したらスライムだった件 17』(GCノベルズ)が6位にランクイン。『ダンまち』『魔法科』に負けない1500万部の超人気シリーズにあって、初の短編集となっていて、灼熱流ヴェルグリンドや、帝国機甲軍団軍団長のカフィギュリオといった、広大な異世界が舞台のシリーズを、脇で支えるキャラクターたちに、厚みを与えるエピソードを楽しめる。
そんなランキングの12位に名を連ねている谷川流『涼宮ハルヒの直観』は、アニメ化によってシリーズの存在、ライトノベルというカテゴリーへの関心、京都アニメーションが持つ実力などを満天下に示した超人気シリーズの9年半ぶりとなる最新刊だ。画集や雑誌に収録された2つの短編に加え、250ページ超もの書き下ろし作品「鶴屋さんの挑戦」が収録される予定で、長いハルヒと「SOS団」の不在に飢えたファンを呼び込み、11月25日の発売に向けて世界を大いに盛り上げそうだ。
■タニグチリウイチ
愛知県生まれ、書評家・ライター。ライトノベルを中心に『SFマガジン』『ミステリマガジン』で書評を執筆、本の雑誌社『おすすめ文庫王国』でもライトノベルのベスト10を紹介。文庫解説では越谷オサム『いとみち』3部作をすべて担当。小学館の『漫画家本』シリーズに細野不二彦、一ノ関圭、小山ゆうらの作品評を執筆。2019年3月まで勤務していた新聞社ではアニメやゲームの記事を良く手がけ、退職後もアニメや映画の監督インタビュー、エンタメ系イベントのリポートなどを各所に執筆。