森七菜、高校3年間の記憶と飾らない無垢さーー352ページの写真集『Peace』の充実

森七菜『Peace』に詰まった飾らない無垢さ

 女優・森七菜の1st写真集『Peace』。 写真集としては異例の352ページ。「こんな厚さの写真集見たことがない」と、まずその見た目で驚いた。タレント写真集は、ほとんどが96ページ〜144ページ程度が定番で、200ページもあれば十分大ボリュームだと感じるが、それをもさらに上回る350ページ越え。発売前から3刷重版が決まるなど、大きな話題性もあった。ぜひ一度手に持って体感してほしい厚みと重みがあるのだが、それは写真の枚数だけの話ではない。

 高校を卒業した現在、上京して本格的に女優業に邁進する彼女だが、ほんの少し前はまだ地元の大分県に住んでいた。本作には、大分と東京を往復し学業と女優業を両立する森七菜の高校3年間がぎっしりと詰め込まれている。見ているだけでハッピーな気持ちを与えてくれるような純真無垢な笑顔。直向きで素朴な彼女の魅力。ファンはもちろんのこと、彼女のことをまだよく知らないという方にも見てほしい。きっと何か、心動かされるものがあると思う。

森七菜の始まり

   森七菜は、中学3年生の頃に地元の大分で現在の所属事務所にスカウトされた。その後、デビュー間も無くして数々のオーディションを突破し、ドラマや映画に出演。当時は「オーディションにめっぽう強い15歳」と囁かれていたほどだ。2019年には、菅田将暉が主演を務め、週を追うごとに大きな話題にもなったドラマ『3年A組-今から皆さんは、人質です-』に出演し、その後、まだほとんど無名だったにも関わらず、2019年7月に公開された新海誠監督のアニメ映画『天気の子』でヒロインの天野陽菜役を演じるなど、すでに話題作に多数出演している。その他、2020年1月に公開された映画『ラストレター』では、主題歌「カエルノウタ」を歌い、同作で歌手デビューも果たした。大塚製薬「オロナミンC」のCMでは、ホフディランのメジャーデビュー曲でありアニメ『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の初代エンディングテーマである「スマイル」を歌唱。演技だけにとどまらず、柔らかく明るい歌声でも元気を届けてくれた。

   華々しい実績を残しつつ、階段を何段も飛ばして駆け上がるような勢いで前進していながら、本作や現在の姿を見て感じるのは、一貫して”森七菜らしさ”が健在していることだ。一見、素朴な少女のようにも見えるが、彼女が発する声やちょっとした動作には、”森七菜らしい”オーラやパワーが漲っている。飾らない無垢さ。心に平和をもたらしてくれるようなピースフルな笑顔。この特別感は何なんだろう。

森七菜が歩んだ3年間

  本作冒頭。そこにはまだ、あどけなさが残る森七菜がいる。本作内のコメントにもある通り、最初は「写り方も分からず、ただただ困惑」していたのだろう。舌を出したり、目線を逸らしたり、少し照れているのが見受けられる。それでも、楽しむときは写真に撮られていることを忘れたように、全力で笑い、全力で楽しんでいる。ときに無防備に居眠りしている瞬間も撮られているが、大分から東京までを行き来する学生生活を思えば無理もない(大分から東京までは飛行機でも約5時間かかる)。写真集や作品としてではなく、まるで子どもの成長アルバムを見ているような、ただただ思い出を閉じ込めただけのような写真が、スッと心に馴染む。ピュアで真っ直ぐなその姿に、言葉で説明するまでもなく、森七菜の魅力が感じられるはずだ。

   ご飯を食べているカットも多く、口いっぱいに頬張ってしっかり食べている姿が可愛らしい。自然のなか、繁華街のなか。お出かけして、笑って、喋って。それらは淡々と流れる日常ではあるものの、経歴を見れば分かる通り、彼女の身には人生を変えるような大きな出来事がたくさん舞い込んでいる。ゆっくり伸びていく髪から感じる時間の流れ。カメラ目線で見せる笑顔も、最初は少しぎこちなかったのがリラックスした自然な笑顔になっていく。次第に、ふとした瞬間の表情が、ぼんやりセリフが浮かび上がってくるような女優の顔つきになる。控室でメイクをしているところや、タクシー・新幹線で移動しているところ以外に仕事を思わせる写真はないが、着々と多くの経験をし、持ち前の感性で一つずつ吸収しているのが伝わる。成長する姿と同時に変わらない笑い方。彼女が歩む一跡一跡が、丁寧にまとめられている。

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