『BLEACH』浦原喜助は“運命”に抗い続けるーーチートキャラの生き様が教えてくれたこと
20周年プロジェクトが動き出し、再び注目を集め始めている人気漫画『BLEACH』。魅力的なキャラクターが多く登場する同作品の中で、コアなファンが多いキャラといえば、浦原喜助だ。主人公・黒崎一護のサポート役ポジションで登場した浦原は、「天才的な才能と頭脳を駆使してやりたい放題やっているチートキャラ」である。そして彼はストーリーを通じて、“悪”へと続いてしまう偶然や運命に抗い続ける姿勢を見せてくれていた。
浦原は物語序盤、空座町にある雑貨店・浦原商店の店主として登場する。なにやら訳知り顔で一護や朽木ルキアなどに関係してくるが、謎が多く飄々としていてどこか胡散臭い雰囲気。だが、一護を浦原商店の地下修行場で鍛え、死神化できるようにしたり、尸魂界に行くための穿界門を開いて固定したり、『BLEACH』の起点と言える「尸魂界篇」は浦原がなければ成立していない。
彼の実態が明らかになっていない段階では、「この人は一体何者なんだ?」と思ったものだが、蓋を開ければ護廷十三隊・元十二番隊隊長兼技術開発局創設者にて初代局長という、“欲張りセット”のような設定を持っている人物だった。しかも、鬼道もお手の物で、難易度が高い九十番台の鬼道を詠唱なしで使用できるという、実力者である。
そして、崩玉を開発した張本人。技術開発局局長時代に崩玉を開発した浦原は、その危険性を恐れて破棄を試みる。だが失敗に終わり、秘密裏にルキアの魂魄に隠蔽して霊力を分散させてることでカモフラージュしようとしていたわけだ。この彼の行動がきっかけで「破面篇」までの騒動が起こってるのだから、まさに「やりたい放題」である。
だが、彼は単にやりたい放題やっていたわけではなく、常に運命に抗い続けていたのではないだろうか。最初にそれを感じたのは、原作単行本6巻。浦原が詠んだと思われる冒頭の詩はこうだ。
そう、我々に運命などない
無知と恐怖にのまれ
足を踏み外したものたちだけが
運命と呼ばれる濁流の中へと
堕ちてゆくのだ
運命を否定し、運命に身を任せる人を無知で臆病者と揶揄しているこの詩こそ、浦原の生き方、立ち回り方の根本と言えよう。
さらに、原作単行本7巻。ファンの間で度々挙がる浦原の名言がある。尸魂界に強制送還されたルキアを救うべく、一護が浦原と修行する前の場面だ。一刻も早くルキアを救いたい一心で「ルキアはあっちでいつ殺される分からない」と浦原に食ってかかる一護を杖で一突き。
キミは弱い
弱者が敵地に乗り込むこと
それは自殺っていうんスよ
「朽木さんを救うため」?
甘ったれちゃいけない
死ににいく理由に他人を使うなよ
冷静に考えれば、一護がどれだけポテンシャルに溢れていようとも、護廷十三隊に敵うはずがない。だが、このままにしておけばルキアは処刑され、崩玉が藍染惣右介の手に渡ってしまいかねない。その「運命」を打破するために、一護の両親譲りの潜在能力を引き出す修行を行なったのだろう。さらに能力に目覚めた井上織姫や茶渡泰虎、石田雨竜、そして四楓院夜一にタッグを組ませることで「運命」を打破する確率を上げようとしているのだ。