『BLEACH』黒崎一護が護った“たったひとつ”のこと 強い力を持つ者の運命とは?
連載終了から4年が経ってもなお高い人気を誇る久保帯人『BLEACH』。家族を護るために悪霊である虚を退治する死神となった高校生・黒崎一護と、死神、人間、滅却師といった仲間たちとの戦いを描く。
今回は物語の主人公である黒崎一護の魅力について迫る。
最初から「普通の高校生」などではなかった黒崎一護
オレンジ色の地毛に、無愛想にも見える態度。不良だと思われ目をつけられたことも数知れず。その外見から偏見を持たれて教師から余計なことを言われないようにと実は成績がいいという努力家の一面がある。
町医者でテンションの高い父と、双子の妹と暮らしており、母は事故で亡くなっているが家族仲は良い。家族揃って夕食を摂るために毎日19時の門限に文句を言いつつも、そのルールを護るという一護自身も家族思いであることがそれだけでわかる。
“ごく普通の高校生”のように見えるが、大きな「普通ではない」ところがあった。それは強い霊感を持っているということ。妹の夏梨曰く「見える触れる喋れる上に超A級霊媒体質の四重苦」。物心がついた頃には普通の人間を見るのと同じように“ユウレイ”が見えるのは当たり前だった。高校生になってからは、より多くのユウレイが寄ってくるようになり、そのことに少なからずストレスを覚えていた。
そして、ついに無差別に魂を食らう悪霊の「虚」に出会ってしまう。霊的濃度の濃い一護の魂に誘われて現れた虚、そしてその虚を退治すべく現れたのが死神の朽木ルキアだった。虚の戦いで瀕死となったルキアは、一護に自分の死神の力を託し、イチかバチかの勝負に出る。それが全ての始まりだった。
一護を戦いに導いた“血”と“運命”
死神化した一護はルキアの予想に反し、虚に圧勝する。霊力に呼応して大きさを変える斬魄刀は見たことがないほど巨大なもので、ルキアを驚愕させた。
そうして“一度だけ”死神になった一護だったが、一護に力をほとんど奪われ、弱体化してしまったルキアの代わりに“死神代行”を行うこととなる。
死神となった一護の周辺はめまぐるしく変化していく。一護の霊力に刺激され、力を覚醒させたクラスメイト。同じくクラスメイトで対虚大魔眷属・滅却師(クインシー)である石田雨竜との対決、次々と現れる強大な敵。
『BLEACH』は全74巻で一護の高校3年間を描いているわけだが、その密度がとにかく濃い。霊力は強いが「ただの人間」だった少年が、世界を救ってしまうほどの存在にまで成長する。
強大な敵に立ち向かう前には修行期間が設けられるが、それが10日であったり3日であったり、という程度。修行自体は覚醒のきっかけであり、戦いの中で強くなっているのが大半なのだが、何せ強い。少しずつ努力で強くなっていく、というよりは、もともと持っていた強大な力をコントロールできるようにし、研ぎ澄ませていく、というイメージのほうが近いのではないだろうか。力が強大すぎて、「うまく避けてくれよ たぶん手加減できねぇ」なんてセリフも飛び出してしまう。
一護のこの強さの理由のひとつには“血”があった。父は死神、亡くなった母は滅却師。また、母は過去の戦いで受けた傷が原因で虚化していた。その虚は母が亡くなったあとは一護を憑代としており、つまり一護の中には死神と滅却師、虚の力を最初から持っていたわけである。サラブレッドにも程がある。