板垣巴留が語る、板垣家の思い出と生活者としてのポリシー 「本当の創作者は生活者としての自分も確立している」
天才ぶることの白々しさを感じ始めた
ーー巴留さんの作品や今回のエッセイ本を通して、“死や生”をとても意識されている印象を受けました。(例えば、就活で祖父の死から感じたことを面接官に話したというエピソード、末っ子として家族全員を看取る決意など)何か死を意識する出来事があったのでしょうか?
板垣:私はかなり幼い頃から祖父母やいとこが亡くなっていたので、幼少期はしょっちゅうお葬式に行っていました。まだ人の死の受け入れ方を知らないうちから、亡くなった人の顔を見てきた経験が大きいと思います。
ーー表現者としての自分だけではなく、「健全な生活者としての自分」を保ちたい、無害な妻になりたいと何度か本の中で出て来ましたが、それはいつ頃から感じでしたのでしょうか。美大の頃はうどん屋で働くことで「健全な生活者としての自分」を保っていたとのことですが、現在そのために行なっていることはありますか?板垣:美大に入ってから、天才ぶることの白々しさを感じ始めたのだと思います。本当の創作者は地に足をつけて、生活者としての自分も確立して生きていると。だから私は週刊連載をしながら毎日しっかり寝てるし家事もするしお出かけもするよう心がけています。
ーーお酒を飲まず規則正しい生活を送っているとのことですが、漫画家の方できちんと睡眠をとって規則正しい生活を送っているのは珍しいことだと思いました。それはやはり、ご祖父様の「嫌なことは先に終わらせる」という教えが身についているからですか?
板垣:というより、私には先述したように生活者として生きるポリシーがあるのだと思います。あと単純に体内時計が中学生のまま止まっているんでしょうね。
ーー『BEASTARS』に続き『パルノグラフィティ』を連載したことで自覚した“漫画家・板垣巴留の作風”のようなものはありましか?
板垣:自分で言うのも恥ずかしいですが、やはり人の人生に宿る”凄み”が好きです。
■書籍情報
『パルノグラフィティ』
著者:板垣巴留
発売中
定価:本体800円(税別)
出版社:講談社
https://kc.kodansha.co.jp/product?item=0000344005