木村カエラが語る、コロナ禍で気づいた愛おしい日々 「ポジティブでいることって大事」

木村カエラが語る、コロナ禍で気づいたこと

   ミュージシャン・モデルとして活躍する木村カエラが、自身の芸能活動15周年の2019年1月から2020年3月までの、約1年3カ月にわたる日々を綴った日記連載が書籍化された。タイトルの『NIKKI』の通り、子育ての楽しさや大変さ、ライブ前の緊張の日々や時事ニュースへの怒りなどが“そのまま”綴られ、家族や友人、スタッフへの愛もまっすぐに描かれている一冊だ。

 今回、『NIKKI』をリリースした木村カエラにメールインタビューという形式で、本書のことや家族のこと、そして新型コロナウイルスの影響などについて答えてもらった。(編集部)

さくらももこの影響

――日記を執筆するまでの経緯を教えてください。

木村カエラ(以下、木村):デビュー15周年を迎える年に、今回のお話しをいただきました。はじめは「木村カエラさんが持っている世界観を一冊の本にまとめませんか?」というお話をいただいたんですが、書籍の帯にもあるように、「本当はもっと早く、変化していく自然な自分をみんなにみてもいたかったのかもしれない」という気持ちがあって、今回は “日記”という形で連載することとなりました。

――「おわりに」でも触れていますが、新型コロナウイルスでこのような世界になった今、日記を読み返してみていかがでしょうか?

木村:新型コロナウイルスの影響がなかった時期に書いているものなので、その日々がいかに幸せなのか、愛しい世界だったのか、自由だったのか、というのは改めて感じます。このような状況になる前に、15周年を勢いよく駆け抜けられたことを本当に恵まれていたと感じます。

 そして、もともとこうやって日記を書くことで、私生活で悩んでいる方や子育てで心細いと思っている方、仕事で頑張ってもなかなかうまくいかないと思っている方などに、少しでも寄り添える本になったらいいなと思っていました。そのときは、まさかこんなにも不安を抱えることになるとも思っていませんでしたが、今だからこそもっと寄り添うことができる本になったのではないかなと感じたりもしています。

――現在はどのように過ごされていますか?

木村:お仕事は抑えていますね。感染対策も取りながらいろいろ慎重になっていますが、やはりライブがしたい気持ちや誰かを勇気づけたい気持ち、歌を歌いたいという私の願いがどんどん膨らんでいっています。それをどうやって表現するかをスタッフと考えながら過ごしています。

――「はじめに」で、この日記を書いていた1年の記憶がほとんどないとありました。このように書籍として振り返っても思い出せないことはありますか?

木村:読んだらだいたいのことは思い出せるのですが、はじめに読み返したときに、こんなにも息子が生き物を持ち帰って来ていたんだなとビックリしましたね。もともと我が家は動物園だといわれるくらい生き物が多いので、それに加えてこんなにも増えていたんだなと思いました。

――本作中で木村さん自身がいちばん好きなエピソードはなんですか? 

木村:発売から少し経ち、色々な人から感想をもらうようになったのですが、自分では当たり前だと思って書いていた「今日は手抜きだ。うどん」というのが頭に残りましたと言われたんです。そこで、そうか……自分には当たり前のことでも、人にはそんな風に刺さるんだと思ったら、すごく好きなエピソードになりました。それからはうどんを作るときに「あー、今日は手抜きだ。うどん」ってセリフが頭の中に浮かんでくるようになりました。

――本作は日記という形式ですが、日常の情景を描き出すエッセイ/コラムとして、リズム感も気持ちよく引き込まれました。影響を受けた作家はいますか?

木村:ありがとうございます。私が好きな作家はさくらももこさんです。さくらさんの本は漫画もエッセイもすべて読んでいるので、日記を書くときにとても影響を受けていますね。作品はすべて好きなので、その中から作品を選ぶのはとても難しいのですが……ひとつあげるとしたら、『そういうふうにできている』という作品です。中学生のときに初めて読んだのですが、今でも印象深く残っています。

――普段から読書はされますか?

木村:絵本がすごく好きなので、たくさん持っています。他にもときと場合によって、自分に今必要だなと思う本を読みます。さくらももこさん以外にも、穂村弘さんなどのアーティストの方の本はよく読みますね。

母親の愛、子供への愛

――文中に「ご両親は喧嘩が多かった」という箇所があり、とても驚きました。本作を読む限り、現在の木村さんの生活は愛で満ちているように感じたからです。喧嘩が多かったというご両親と過ごした日常の中にも、愛を感じることはありましたか? 

木村:みなさんもそうだと思うのですが、子供の頃の記憶は大人になると、嫌なことや「あのとき、すごく怒られたな」とか、悪いことが優先されて記憶に残っている気がします。それが自分が大人になっていくにつれて、「あのお叱りはこの日のためにあったんだな」とか、「あんなに怒っていたのは子どものことが本当に好きだったんだな」と思えるようになりました。自分も大人になって、家族を持って、同じ立場になって気づくことがたくさんあり、今の方が愛情を感じることが多いです。

――特にお母さまの影響は強そうですね。

木村:母はいつもはつらつとしていて、本当に元気で明るい人なんです。そんな母が人に愛されている姿を見ていて、本当に素敵だなと思うので、私も人と会うときは元気でいたいと思っています。その部分はすごく影響を受けていますね。

 あとは、ものづくり。裁縫や編み物、料理なんかが好きで小さい頃から一緒にやっていて今でも好きです。

――将来、お子さんにこの作品を読んで欲しいと思いますか?

木村:読んでほしいと思っています。感想をネット上に書いてくださった方がいて、その中で「この本はカエラさんが家族にあてた長文のラブレターなんだと思う」と言っていて、それを見て、はっとしました。本当にその通りだなと思いました。将来、子どもが読んで、こんなに愛されていたんだよって伝わったらいいなと思います。

――「歌詞を書くときに使う脳と、ライブのときに使う脳はまったく違う」とありましたが、日記を書くときはどちらに近いでしょうか? または、どちらとも違いますか?

木村:どちらとも違うような気がします。日記を書くときは何も考えていないというか、自分の心の独り言を羅列していくという感じですね。歌詞を書くときはパズルのようなイメージで、ライブのときは自分を覚醒させているイメージです。

――歌詞以外の言葉を紡ぐ際に心がけていることはありますか?

木村:なんとなくですが、リズム感は意識して書いていたかもしれないです。あとは、言葉だけだとイメージがしづらい部分があると思うので、少しでも読んだ人がイメージできるような言葉選びは意識しましたね。

――本作を読んでいて、アルバムなどの作品のアートワークに積極的に関わっている印象を受けました。今回の装丁デザインには木村さんの意見はどのくらい反映されていますか?

木村:今回のアートワークに関しては、ステイホームの期間中でメイクさんもカメラマンさんもいない中で取り組まなければいけませんでした。娘にその話をしたら、メイクをしてくれたり、写真を撮ってくれて、その写真はカバーを取った表紙の写真に使っています。

 カバーは自撮りです。これはノーメイクなのですが、本の内容が自分のありのままを書いた内容ということもあり、写真もありのままでいく必要があると思って撮影しました。その上で、トリミングやこのくらいのバランスで表紙にしてくださいとお願いをしました。そして、日記を書いていく中で原点に戻っていくイメージがあったので、帯には私の曲の『リルラ リルハ』にもあるように、好きなマーガレットの花を使いたかったので、その点は具体的にこうしてほしいですとお願いをしました。

――本作は木村さんのキャリアの中でもエポックメイキングな作品となりましたか?

木村:なりましたね。こんなにも自分をさらけ出すことをしてこなかったので、とてもスッキリしているというか、今まで以上に生きやすくなった気がしますね。

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