『アンサングシンデレラ』原作はドラマとどう違う? 薬剤師の実態に迫るアプローチ

『アンサング』原作とドラマのアプローチの違い

 薬剤師という職業を知る職業漫画としても、患者とのエピソードを描く医療漫画としても楽しめる一方で、『アンサングシンデレラ』は日本の抱える薬や医療にまつわる様々な問題にも切り込んでいる。放送中のドラマと合わせて原作を読むことで、より深く薬剤師の世界を理解し作品に没入することができるだろう。

 なお、本作での登場人物については、ドラマと描かれ方の違うキャラクターも多い。ドラマでは登場率が高く、後輩として常にみどりをついて回る相原くるみ(西野七瀬)は、コミックでは自分なりの仕事のやり方を模索するタイプであり、みどりにいつも指導を受けているわけではない。

『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』(c)フジテレビ

 さらにみどりの先輩薬剤師・瀬野章吾(田中圭)はドラマでのクールな印象とは対照的に、熱く患者と向き合い薬剤部と病院の関わり方を改善しようと努める熱血キャラだ。

『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』(c)フジテレビ

 こうした違いは作品のイメージに反映し、暖かくポップに描くドラマと、繊細に合理的に描くコミックとで受け取り方が大きく変化するだろう。どちらも薬剤師という仕事について関心をそそる内容であり、感動し心を動かされるものだが、アプローチが違うため楽しみ方もそれぞれ。ぜひ手にとってドラマと比較してみて欲しい。

 自分の生活の中にも実は密かに関わりのあることが多い薬剤師という職業。謎多き薬の専門家たちが、普段どのような業務に勤んでいるのか、ぜひ覗き見てみてはいかがだろう。この作品との出会いは、薬を受け取りに行く薬局の景色を大きく変えるかもしれない。

■Nana Numoto
日本大学芸術学部映画学科卒。映画・ファッション系ライター。映像の美術等も手がける。批評同人誌『ヱクリヲ』などに寄稿。Twitter

■書籍情報
『アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり』既刊5巻発売中(ゼノンコミックス)
著者:荒井ママレ
企画・原案:富野浩充
出版社:コアミックス

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