伴名練『全てのアイドルが老いない世界』に寄せてーー文学アイドル・西田藍レビュー

西田藍の『全てのアイドルが老いない世界』評

 出産イベントの発生条件を正確に知ったのは、小学校高学年頃だったが、知識があるからといって、来るかもわからない出産イベントに向けて身体が育っていく不愉快さにはイライラしていた。

 この作品の「アイドル」たちは10代の少女に身体を固定しているが、私なら何歳に固定したいだろうかと考えた。少女という縛りがあるならば、絶対に初潮前、第二次性徴前の少女で固定したい。延々と肉体が思春期なんて御免こうむるし、それならまだ20代半ばがいい。(生殖機能を完全にコントロールできるなら、最高じゃん!って思うけれど)

 でも私が自然に気楽な気持ちになれたのは、確実に精確に日々、老いが訪れるからであって、自分の年齢も人生の道も始まりも終わりも、そして人の生気で生きるか否かも、人権を明け渡すかいなかも、全て選択しなければいけない「アイドル」たちはどんなに苦しいだろうかと思う。歳を重ねるほど時間は早く感じるという。長寿の彼女らと一般人の時間の早さが異なるのは、もしかしたら救いなのかもしれない。

■西田藍(にしだ・あい)


1991年 生まれ。 アイドル・タレント。 2012年に講談社主催のアイドルオーディション『ミスiD2013』で準グランプリを受賞しデビュー。 文学アイドルとして書評、 エッセイなど執筆活動を行う。

■作品情報
『全てのアイドルが老いない世界』
伴名練 著
小説すばる Digital Book
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