伴名練が語る、SFと現実社会の関係性 「大きな出来事や変化は、フィクションに後から必ず反映される」

伴名練が語る、SFと現実社会の関係性 「大きな出来事や変化は、フィクションに後から必ず反映される」

 SF短編小説集『なめらかな世界と、その敵』が異例のヒットとなっている、伴名練インタビューの後編をお届けする。前編ではSF論を中心に語ってもらったが、後編ではさらに社会とSFとの関わりについてなど、視点の広い話を展開してくれた。SF作家ではない吉屋信子からの影響など、意外な一面(?)も披露してくれ、伴名練という作家の多面的な側面を知る機会となった。

前編:『なめらかな世界と、その敵』伴名練が語る、SFの現在地「社会の激変でSFも期待されている」

女性主人公が多い理由

――今回の本には6本の短編が収録されていて、それぞれ作風も文体も異なります。伴名さんが本来一番得意な作風は、この中から選ぶとしたらどれなのでしょうか。

伴名:書簡形式の「ホーリーアイアンメイデン」は書きやすかったですね。このスタイルだとエピソードをどんどん詰め込むことができるからです。通常の一人称や三人称文体の小説はエピソードやアイデアを次々に放り込んでいくのは難しくて、例えば「なめらかな世界と、その敵」は1つのアイデアでなんとか勝負している作品の例です。他にも「ゼロ年代の臨界点」のような特殊形式にすれば多くのアイデアを取り込むことができますね。ただ、ばんばんアイデアを放り込めば、普通の読者にとって読みやすいかというとそうではないので、そこは常に悩みながらやっています。

――「ホーリーアイアンメイデン」は書簡形式ですが、これは『アステリズムに花束を 百合SFアンソロジー(ハヤカワ文庫JA)』で発表された「彼岸花」にも似ていますね。

伴名:実は百合SFアンソロジーの「彼岸花」は、「ホーリーアイアンメイデン」で登場人物に迎えさせた結末が心苦しくて、別の回答に辿り着きたくて書いたものなので、当然似ているんです。個人的には悲劇的だったり嫌な後味の結末の方が簡単に書けるのですが、それは作者の都合でしかない。「ホーリーアイアンメイデン」の登場人物たちにも、もっと別な結末を迎える権利があったんじゃないか、作者としてはそういった可能性を書く責務があるんじゃないか、という思いも、「彼岸花」を書く動機になっています。

――その2作、そして表題作もそうですし「ゼロ年代の臨界点」もですが、女性を主人公にすることが多い印象がありますが、なぜでしょうか。

伴名:デビュー作のホラー小説「少女禁区」は男性主人公でしたけど、最近書くものは女性主人公が確かに多いですね。「なめらかな世界と、その敵」以降、女性主人公が増えてきたように思います。女性二人の話はあるのに男性二人の話がまだないのは、男と男の友情を描くのが気恥ずかしいということだと思います(笑)。

――男性作家にとっては、男の気持ちの方がリアルに書けたりしそうなものですが、そんなことはないんですね。

伴名:男性の友人・知人はほとんど京都大学SF研究会時代の仲間なので、男性の登場人物を書くとその人たちが透けて見えてきて自分で気恥ずかしいんです。伴名練の本を最初に読んでくれるのはSF研の仲間たちですから、本人たちに読まれるとお互いに気まずいというか(笑)。

――なるほど、そういう事情があるんですね(笑)。「ゼロ年代の臨界点」を読んで面白いと思ったのは、あれは架空の日本のSF史を書いたものですが、日本のSFの祖が女性であるとしていた点です。

伴名:いわゆるSFの祖は、メアリ・シェリーの『フランケンシュタイン』と言われていますから、もしかしたら日本でもそんなルートもあり得たのではないかと思ったのが発想の起点です。また、自分が吉屋信子の作品集『花物語』に影響を受けているのもあります。あの本は、序盤こそ、女性たちどうしの憧れや思慕のエピソードを書いた、イメージ通りの少女小説なのですが、後半からは女性が社会で受けている抑圧などが書かれた、フェミニズム的な要素を含むものになっていくんです。そういう意識というか、男性社会に対する反発心めいたものに、知らないうちに影響を受けている部分もあるかもしれません。

――旧来の男性的な、いわゆるマッチョイズム的なものはあまりお好きではないということですか。

伴名:そこは難しいところで、誰かが誰かを救う話を書きたい時が度々あって、でも、それはある程度ヒロイズムとかマッチョイズムの要素が入らざるを得ないと思うので、その真芯からいかに遠ざかるかを懊悩しながらいつも書いていますね。何かを助けるために、いろんなものを犠牲にしないといけないことは確かにありますけど、それを書く時に、いかにもマッチョな話になるのは避けたい。男性である自分が、女性主人公を書くことが増えてきたのも、年齢の高い主人公をあまり書かないのも、作者自身から遠い主人公に決断を託したい、マッチョイズムを少しでも減殺したいという意図もあるように思います。

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