『僕のヒーローアカデミア』に息づく、日本的ヒーローの3要素とは? 石ノ森章太郎の影響を紐解く
名作漫画の遺伝子
このような視点で見てみると、『僕のヒーローアカデミア』というアメコミをオマージュした作品を日本のヒーローものに落とし込むときに、作品全体としては明快な作風でまとめあげられているが、物語の根幹をなす部分に関していうと、石ノ森のエッセンスが自然と練り込まれていることがわかるだろう。自己否定の部分で決定的にネガティブな要素を取り入れていないことで(むしろ無個性からスタートしているため、それ以上に悲観的な要素が出にくいことが大きいと思うが)、出久の性格も常に前向きになり、目標に向かって努力して成長していく少年漫画の模範的な主人公像に落とし込めているのではないだろうか?
最後にひとつだけ付け加えておくと、漫画版仮面ライダーでは、2号ライダーの一文字隼人が登場する際に、本郷猛はショッカーライダーとの戦闘で一度命を落としている。その際に一文字は、本郷の脳と自分をつなぐことで文字どおり“心を継いで”、以後のショッカーとの戦いに赴く。先代の”思い”を受け継いできた力がワンフォーオールである。その個性こそが石ノ森のヒーロー観が今に受け継がれているなによりの証ではないだろうか?
■関口裕一(せきぐち ゆういち)
スポーツライター。スポーツ・ライフスタイル・ウェブマガジン『MELOS(メロス)』などを中心に、芸能、ゲーム、モノ関係の媒体で執筆。他に2.5次元舞台のビジュアル撮影のディレクションも担当。
■書籍情報
『僕のヒーローアカデミア(26)』
堀越耕平 著
価格:本体440円+税
出版社:集英社
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