『ジョジョリオン』東方定助のスタンド「ソフト&ウェット」の謎ーーなぜ”奪う”能力なのか?

『ジョジョリオン』東方定助のスタンドの謎

 医院長の思惑も見え、東方家、定助、そして医院長を始めとした岩人間たちの新ロカカカの実を巡る争いもいよいよクライマックスに差し掛かる雰囲気を見せ始めた『ジョジョリオン』。まだ解明されていない謎が多い今作だが、ここで私が個人的に気になっている点を考察しきたい。

東方定助が与えられた”奪う”能力

『ジョジョリオン(1)』表紙

 それは主人公、東方定助のスタンド「ソフト&ウェット」とその能力についてである。読者ならご存知のことであるが、スタンドというのは「生命エネルギーが造り出すパワーある像(ヴィジョン)」であり、スタンド使いの精神の形を具現化したものである。そしてパラレルワールドに突入した7部で「困難に立ち向かう」ためのものだと言及された。7部と地続きの世界である8部でもスタンドの概念としてはこれが適用されていると言えるだろう。それでは定助はいったい何に立ち向かっていて、そのスタンドの能力は何を暗示しているのか。

 東方定助は吉良吉影と空条仗世文、二人の人間が融合した存在であり、スタンドも吉良のキラー・クイーンの爆破能力と、仗世文のソフト&ウエットの吸い上げる能力、双方の特性を受け継いだ「物理的な何かを一時的に奪う」力である。歴代のジョジョ主人公のスタンド能力は物語のテーマを内包した能力であることは言うまでもない。そしてこれまでの主人公のスタンドは、なにかを生み出す、もたらすプラスのエネルギーの発現であることがほとんどであった。これと比較すると、定助のスタンド能力は明らかに異彩を放っている。定助はなぜ”奪う”能力を与えられたのか? そして荒木飛呂彦自身が語ったジョジョリオンというタイトルに含まれた「定助がこの世に存在する意味」とは?

 当初、定助は融合することで失った自身の記憶を取り戻すために行動をしていた。壁の目とロカカカの等価交換によって奪われたもの、失ったもの、得たもの。”奪われた”という思いと”取り戻す”という意志が2人のスタンドの融合した能力を形作ったのは想像に難くない。吉良吉影を半分受け継いだとはいえ、ここではまだ仗世文としての意志の方が強い。

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