葛西純が明かす、結婚秘話と大日本プロレスとのすれ違い 葛西純自伝『狂猿』第8回
デスマッチファイター葛西純自伝『狂猿』
「じゃあ別れる」の一言ですべてが決定
そんな感じで半年ぐらい経ったころ、彼女が仕事が休みでこっち来たので会ったら「もう、こっちに出てきたいんだよね」と言い始めた。彼女は長野で事務員をしてたから「仕事どうするのさ」って言ったら、「やめてこっち来るつもり」と。いやいや、いま来られても俺はまだ道場に住んでるペーペーだし、ちょっと困るよ、なんて言ったら、「それじゃあ別れる」って言い出して。まぁ別れるのはちょっと……みたいな感じで渋々OK出したら、すぐに彼女は相模原にアパート借りて1人で住むようになった。まぁ、これで会えるようになったし、別にいいかと思って、ほぼ毎日どこかで会ってデートするような生活を2ヶ月くらいしたのかな。そしたら彼女が今度は「同棲できないかな」と。「いやいや、俺はまだデビューしたてでプロレスで食えるようになってないし、寮を出て女と暮らすなんて会社には言えないよ」って言ったら「じゃあ別れる。アパート引き払って長野帰る」。ぜんぶ同じパターンだよ……。
とりあえず会社の人間を説得してみるってことになって、意を決して山川さんに事情を話したら「そっか、いいんじゃね」みたいな軽い答えで。「また練習生も入ってくるし、お前が寮を抜けたところで何も変わらないから」みたいな感じで、すんなりと寮を出ることになった。彼女の相模原のアパートに一緒に住んで、通いで鴨居の道場まで行って練習してたんだけど、ある日彼女が晩飯食いながら「おばあちゃんが高齢で先も長くない。はやく孫の顔を見せたいから結婚してほしい」と。いやいや俺っちはまだ結婚願望なんてないし、プロレスに集中したいし、それに同棲して、すぐに籍入れますっていうのは会社にも言いづらいな、みたいに答えたら、また例のごとく「なら別れて長野に帰る」ってゴネるので、「もうわかりました」と。
それで会社に結婚しますって伝えなきゃなって思ってたら、すごいタイミングで、とある選手と、とあるスタッフが社内結婚する話が湧き上がった。大日本プロレス的には社内恋愛だから、そっちのほうが大事件で、これは俺も言いやすいと思って便乗して会社に言ったらすんなり結婚することができた。
俺っちは、家庭ができたからって守りに入るつもりなんてサラサラなかったし、すごい試合をドンドンやって、トップに立ってやろうと思っていた。実際、この頃はどんな試合でも盛り上がっていたからね。自分では、今日はちょっとヤバいな、ショッパい試合しちゃったなと思ってても、お客さんには大受けだった。