恩田陸が明かす、20年ぶりの続編『ドミノ in 上海』執筆秘話 「広げた風呂敷を畳むことができるか不安でした」
何も考えずに笑えるスカッとしたエンタメを
――時間がかかったからこそ、並走した物語がたくさんあったのではないかと思うのですが、混乱はしなかったんですか?
恩田:しましたね(笑)。飽きっぽいので、並走することには向いているというか、物語同士が混線することはないんですけど、なにぶん人数も多いし、間隔があいていたので、「この人が最後に登場したのはいつだっけ?」とか「時系列はどうなっているんだっけ?」とか。最終的には担当編集者さんがつくってくれた表を見ながら書いていました。あとは、今回のようにエンターテインメントに徹した小説を書くときは、自分のテンションをあわせるのがすごく大変なんですよね。他の物語がシリアスだったりすると、戻ってくるのに時間がかかる。
――書く小説ごとに、聴く音楽を変えてスイッチを変える、なんてことはあるんですか。
恩田:前作の『ドミノ』はプリンスの「The Rest of My Life」がイメージにぴったりだったので、テーマ曲にしていました。『錆びた太陽』という小説のときもストレイテナーの曲がしっくりくるな、と思っていましたが、その2作くらいで、今作を含め、曲を決めることはめったにありません。昔から“ながら勉強”が苦手で、書き始める前にテンションをあげるために音楽を聴く、ということはありますけれど、それも特定の曲というわけではないですね。
――ジャンルは、ジャズやクラシックが多いですか?
恩田:そうですね。最近は上原ひろみさんのアルバムをよく聴いています。あとは、ブリティッシュロックが好きなので、クーラ・シェイカーにハマっていた時期もありました。あとは、ケイト・ブッシュの大ファンなのでアルバムは全部もっています。幅広くなんでもというよりは、好きなバンドやアーティストの曲をくりかえし聴くことのほうが多いですね。
――恩田さんの作品は、『蜜蜂と遠雷』のような音楽小説だけでなく、音楽的な“流れ”のようなものを感じることが多いので、音楽を聴きながらなのかな、と思っていました。今回の『ドミノin上海』も、これほど壮大な物語でありながら、止まるべきところが見つからず、夢中になって最後まで駆け抜けてしまいましたし。
恩田:そうおっしゃってくださる方が意外と多くてほっとしました。教訓も何もない話ですし、ただただ笑って読んでもらいたい、スカッとした気分になってほしい、という思いで書いていましたから。私がはじめて食事を忘れてのめりこむ経験をしたのは、ロアルド・ダールの『チョコレート工場の秘密』でしたが、あんなふうに皆さんも夢中になってくださったら、と思います。
――外に出ることがままならず、鬱々とした気持ちになっている人が多い今はとくに、ただ笑えて、楽しい気分になれる、本書のような小説こそ求められている気がします。
恩田:外出できないのなら、せめて脳内旅行を、本書で楽しんでいただければ幸いです。
■書籍情報
『ドミノin上海』
著者:恩田陸
定価:本体1,700円+税
頁数:568ページ
体裁:四六判上製・単行本
発行:株式会社KADOKAWA
公式サイト
『ドミノ』
著者:恩田陸
定価:本体640円+税
頁数:384ページ
体裁:文庫判
レーベル名:角川文庫
発行:株式会社KADOKAWA
公式サイト
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