『ゴールデンカムイ』囚人集の中でもひときわ目を引く「親分と姫」  愛と共に生きた二人の魅力に迫る

『ゴールデンカムイ』親分と姫の魅力

 『ゴールデンカムイ』236話(『週刊ヤングジャンプ』2020年19号)では船内に緊張が走る中、刺青人皮の新たな情報を耳にする。

 杉元一派はこのまま無事に下船できるのだろうか? 平和な船旅とは程遠い状態に陥ったため、まだまだ到着まで気が抜けないはず。刺青の入った囚人は総勢24名。そのほとんどが既に姿を現しており、残す刺青人皮はあと4枚。絶命している者も多いが、皆たいへん個性的でインパクトのあるキャラクターばかりだ。なぜか特殊な性癖を持つ者が目立ち、食人を好む家永カノ、無類の女好きである牛山、動物に欲情する姉畑支遁など、想像の斜め上をいく人物も多い。

囚人集の中でもひときわ目を引く存在

※以下、ネタバレあり

 さて、その中でも際立った存在感を誇るのが「親分と姫」だ。本作の序盤に登場したが、読者にとって印象強い囚人であることに間違いない。「親分」の若山輝一郎と「姫」である仲沢達弥は65話(コミックス7巻)にて登場。登場時はヒグマに追われて駆け込んだ家屋にふと現れた、不気味な人物であった。後に若山がヤクザの親分ということが発覚し、杉元と一触即発となる。一見キリリとした若山と、一般市民にしか見えない「姫」こと仲沢。アンバランスな組み合わせに目を奪われる中、「親分が浮気するからだ!!」と仲沢は悲愴な声を上げる。ついヒグマ三頭に囲まれていることを忘れそうになった、力強いセリフだ。

 若山が男娼と遊んでいたことや、絶体絶命の中、まだなお親分への気持ちを爆発させる仲沢。遂に二人が恋仲にあることも判明し、非常に情報量の多いエピソードで、くらりとめまいがしそうになった――。

 だが若山が終盤にて、傷を負いながら「姫~ッ!」と手を差し伸べる姿には不思議な感動さえ覚えた人もいるはず。最終的には絶命し、皮を剥がされるも美しき最期には拍手喝采モノ。個性派の囚人だが、愛と共に朽ち果てたある意味感動的(?)なエピソードである。

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