島で暮らす猫たちの仲睦まじい姿にきゅん! 後藤由紀子の『キス猫 −すりすり、ぎゅっ、と。−』レビュー

後藤由紀子の『キス猫』レビュー

愛しい日々の読書

やさしい環境で育つ猫たち

 2016年より日本全国の島々に通い、2017年からその島に暮らす猫たちの写真を撮り始めて、インスタグラムに掲載されたものをまとめた写真集です。
 
 本のタイトルもグッときます。ただでさえかわいい存在なのに、寄り添ったりキスをしたりと、仲睦まじい姿がたくさん収められています。まどろむ表情に何度もきゅん!とし、ページをめくるたびに「やっぱり猫が好き」と再確認してしまいました。 

 青い空と白い雲、静かな海を背景に緑に囲まれてゆったりと暮らす猫たち。都会に暮らす猫とは違って、のんびりとやさしい環境にあるので、道路の真ん中で堂々と寝ているそうです。ときには人間のほうが車を迂回して、それでも動かなかったら一旦車から降りて、猫を寄せてあげるという愛あふれる島民の皆さん。見ているこちらも気持ちが和んで癒されました。


 最近のニュースでは、コロナウイルスの話題で持ち切りで、不要不急の外出は控えるようにと毎日唱えられ、先の見えない不安にざわざわしているこのご時世に、心あたたまりました。こんなとき、理屈で固める難しいものではなく、右脳で感じるやさしいものを欲していたのかもしれません。ここまで来たら自分の身は自分で守らねば!と思います。なるべくストレスのかからないよう、こういう本を読んで、穏やかに暮らすことで免疫力アップさせていきたいですね。

 「母は強し」というページでは、柱に登った子猫を助ける話があります。それを読んで、ある出来事を思い出しました。昔、姉がポケットに子猫を入れて帰ってきたことがありました。当時、小泉今日子さんの歌われていた曲名『夜明けのMEW』から「ミュー」と名付けて、飼いはじめました。そのミューちゃんが庭の木登りをするものの、自分では降りられなくて、木の上でニャーと鳴く姿を思い出しました。両親と三姉妹と猫と犬と一緒に暮らしていたときの話。なんだか懐かしいです。

 旅好き猫好きな著者が、島を旅するというテーマも素敵です。タイムスケジュールをきっちり作って、観光名所を訪ねる忙しい旅とは真逆。早起きして猫たちがお互いを毛づくろいしたり、すりすりしたり、鼻を寄せて朝の挨拶をするという愛情たっぷりの時間を、空気のような存在と思ってくれるまで、静かにじっくり過ごす。何とも贅沢な時間の使い方です。毎日せわしなく暮らしていますが、のどかに過ごすことは大切だなーと改めて思いました。 

 この島に暮らす猫たちの中でも、モテモテのシャム猫がいるそう。本来ならばたくさんのオスから、メスがアプローチを受けるのが通常のところ。そのモテ男のあとを、メス猫がぞろぞろついて行く様はとても珍しくて、絵面を考えるだけでもほほえましいだろうなーと思います。堂々としていて体格が良くてけんかも強いけれど女性にやさしい、ガツガツしていなくて立ち振る舞いがかっこいい、彼が人間であってもきっとモテていたに違いないとあります。そっと寄り添うメス猫はトロンとした何とも言えない表情をしてました。そのまわりに甘い時間が流れていてロマンティックです。

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