『十二国記』が吉川英治文庫賞に 文学新人賞は今村翔吾と呉勝浩が2人同時受賞

吉川英治文学新人賞、文庫賞発表

 第54回吉川英治文学賞、第41回吉川英治文学新人賞、第5回吉川英治文庫賞の三賞が、3月2日に発表された。文学賞は受賞作なし、新人賞には今村翔吾『八本目の槍』と呉勝浩『スワン』が、文庫賞には小野不由美『十二国記』シリーズがそれぞれ選出された。

 吉川英治文学賞とは、公益財団法人吉川英治国民文化振興会が主催、講談社が後援している文学賞で、優れた作品を新聞、雑誌、単行本等に発表した作家に贈呈される。年に一度発表され、浅田次郎、五木寛之、北方謙三、林真理子、平岩弓枝、宮城谷昌光の6名が選考委員として名を連ねている。

 吉川英治新人賞は、候補6作の中から2作が選ばれた。今村翔吾『八本目の槍』は、石田三成ら秀吉の配下となった8人の若者を追った歴史小説だ。一方、呉勝浩『スワン』は、ショッピングモールで起きた無差別銃撃テロの事件後を描いたミステリー作品で、第162回直木賞にノミネートされたことでも注目を集めた。

 受賞を受け、今村翔吾はツイッターで「読者の皆様をはじめ、応援して下さった多くの方々に感謝致します。これを励みにより一層精進します。めっちゃ嬉しい!皆さん、ほんまにありがとう!!」と喜びを投稿、呉勝浩は「三年連続、三回目のノミネートでした。たいへん光栄に思う一方、今回も肩を落とすのかと覚悟もしていました。ほんとうにうれしい。この先、生半可な作品は書けなくなってしまいました。がんばります。」と出版社を通じてコメントを発表した。

 同日発表された吉川英治文庫賞に輝いたのは小野不由美『十二国記』。2019年に発売された『白銀の墟 玄の月』第一巻~第四巻は、18年ぶりの新作とあって刊行後わずか1カ月で4冊累計250万部数を突破し、社会現象を巻き起こした。

 同文庫賞は、5巻以上刊行されているシリーズで最新刊が発表された中から最も優秀な作品と、その作家に贈られる。今年は15の候補作品から、約50人の選考委員の投票で受賞作が決定した。

吉川英治文学賞

受賞作品なし

吉川英治新人賞候補作

相沢沙呼『medium 霊媒探偵城塚翡翠』講談社 2019年9月刊
伊岡瞬『不審者』集英社 2019年9月刊
☆今村翔吾『八本目の槍』新潮社 2019年7月刊
☆呉勝浩『スワン』KADOKAWA 2019年10月刊
凪良ゆう『流浪の月』東京創元社 2019年8月刊
平岡陽明『ロス男』講談社 2019年10月刊

吉川英治文庫賞候補作

麻見和史『警視庁殺人分析班』シリーズ 講談社文庫
石田衣良『池袋ウエストゲートパーク』シリーズ 文春文庫
今村翔吾『羽州ぼろ鳶組』シリーズ 祥伝社文庫
上田秀人『百万石の留守居役』シリーズ 講談社文庫
小川一水『天冥の標』シリーズ ハヤカワ文庫 JA
☆小野不由美『十二国記』シリーズ 新潮文庫
川瀬七緒『法医昆虫学捜査官』シリーズ 講談社文庫
菊地秀行『吸血鬼(バンパイア)ハンター』シリーズ 朝日文庫ソノラマセレクション
京極夏彦『百鬼夜行』シリーズ 各社
黒川博行『疫病神』シリーズ 角川文庫
佐々木譲『道警』シリーズ ハルキ文庫
小路幸也『東京バンドワゴン』シリーズ 集英社文庫
矢崎存美『ぶたぶた』シリーズ 光文社文庫
山口恵以子『食堂のおばちゃん』シリーズ ハルキ文庫
米澤穂信『古典部』シリーズ 角川文庫

■受賞作品情報
『スワン』
著者:呉勝浩
発⾏:株式会社KADOKAWA
発売:2019年10⽉31⽇
定価:本体1,700円+税
詳細ページ:https://www.kadokawa.co.jp/product/321905000425/
◆リアルサウンドで行った呉勝浩へのインタビュー記事
https://realsound.jp/book/2019/12/post-468996.html

『八本目の槍』
著者:今村翔吾
発行:株式会社新潮社
発売日:2019年7月18日
定価:本体1,800円+税
詳細ページ:https://www.shinchosha.co.jp/book/352711/

『十二国記』シリーズ(新潮文庫)
著者:小野不由美
発行:株式会社新潮社
詳細ページ:https://www.shinchosha.co.jp/12kokuki/
◆文筆家・書評家 三宅香帆による書評
https://realsound.jp/book/2020/01/post-489379.html
◆書評家・ライター タニグチリウイチによるコラム
https://realsound.jp/book/2019/11/post-452396.html
◆書店員・ライター 藤原奈緒によるコラム
https://realsound.jp/book/2019/11/post-440937.html
◆文芸評論家 細谷正充による書評
https://realsound.jp/book/2019/10/post-435299.html

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