『マイ・ブロークン・マリコ』で注目の漫画家・平庫ワカ、初インタビュー 「この作品を描いて本当に報われた」

『マイ・ブロークン・マリコ』インタビュー

ふたりのヒロイン、シイノとマリコについて

――それではキャラクターについてうかがいます。まずは主人公のシイノトモヨから。彼女は主人公であるにもかかわらず、実はマリコと比べてどういう女性なのか、その素性はちょっと謎ですよね。キャラが立っているため、そのあたりあやふやでもまったく気になりませんが。

平庫:たしかにマリコに比べるとシイちゃんはどんな家庭で育ったのかなど詳しくは描いていませんね。繰り返しになりますが、最初は「遺骨と旅する女」という漠然としたイメージしかなかったものですから、主人公についてあまり深い設定は考えていなかったんです。ただ、これはマリコについてもいえることなんですけど、作品にもよりますが、私は初めからキャラクター設定をきっちりと考えて漫画を描くタイプではないみたいで。描きながらキャラを理解していくというか。そういう意味では作りこもうと思って作ったキャラクターではなく、自分の中からすんなりと出てきたキャラクターです。それゆえに、私自身が感じていた憤りなどをシイちゃんに託した部分はあるのかもしれません。

―― 一方のマリコですが、こちらのキャラ立てもすごいと思いました。物語の時間軸の中では彼女はずっと絵的には箱に入った遺骨として描かれているわけですが、要所要所で印象的な回想シーンを断片的に挿入していくことで、かつて生きていた女性の生々しい姿が浮かびあがっていく。その手法に感心しました。

平庫:ありがとうございます。ただ、回想シーンの挿入については単純にそうするしかなかった、というのもありますね。なぜならマリコは最初から死んでいますから。ちなみに3話までのネーム自体はわりとすんなり描けたんですけど、実はマリコがどういうことを考えていた人なのかだけははっきりとつかめていませんでした。ですが、4話のネームを一度50Pくらいまで描いた後で丸ごと描き直したことがあったのですが、そのときにようやく彼女のキャラをつかめた感じです。マリコはただピュアなだけでもないし、いわゆるメンヘラーー私この言葉死ぬほど嫌いなんですけども、そういう人でもない。そういうデフォルメされたキャラクターにはしたくないと4話のネームを描きながら思っていました。

「生きていてくださってありがとう」と伝えたい 

※以下、ネタバレ注意

――話は変わりますが、シイノの素性を含め、本作には「謎」が多いですよね。たとえばマリコはなぜ死んだのか、さらにいえば本当に自殺なのか、そして、最後にシイノに届いたマリコからの手紙に何が書かれていたのかなど、並みの漫画家なら描かずにはいられないようなことをすべて謎のままにしています。これは先ほどおっしゃられたミニシアター系の映画の影響などもあるのかもしれませんが、あえて真相は読者の想像に委ねようということですか?

平庫:もちろん自分の中ではマリコに何があったのかは考えていましたし、実際、描き直す前の4話のネームでは謎解きのようなシーンも描いていました。でもその4話のネームを全部描き直しているときに、これはシイちゃんの物語で、シイちゃんの葛藤の物語であって、謎解きの物語ではないと気がついて、その部分をざっくりと削りました。また、最後の手紙については、正直にお答えすれば、ぼんやりとしたイメージはあったものの、何が書かれているのか、はっきりとはわからなかったので、わからないものを無理やり描くのはやめようと思いました。

——ただ、あそこで手紙を読んだシイノは、「…うん」と何かを肯定してますよね。それだけでも、マリコからの手紙が希望を感じさせる内容であることは理解できます。

平庫:手紙の具体的な内容までは見えなかったんですけど、それを読んでるシイちゃんの姿は頭に浮かびました。私が好きな映画や漫画は、作品を見終わったあとで「あれはなぜだろう?」と自分が考える余地を残してくれるものが多いですし、自分もそういうものを描きたいなぁと思いました。

――それでは最後に、読者の方々にひと言お願いします。

平庫:自分の作品を多くの方たちが読んでくださっているということは励みになりますし、心からうれしく思っています。連載中や単行本が出たあとでいくつか、かつてマリコのような辛い経験をしたという方たちからメッセージをいただいて、いずれもこの漫画を読んでよかったということを伝えていただきました。それを見たとき、この作品を描いて本当に報われたと思いました。メッセージをくださった方々をはじめ、読んでくださった方々に「生きていてくださってありがとう」ということをこちらからもお伝えしたいです。

 今後も自分も読みたいと思えるような漫画を発表していきたいと思いますので、これからもどうぞよろしくお願いいたします。

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<応募締切>
2020年3月27日(金)まで

■書籍情報
『マイ・ブロークン・マリコ』
平庫ワカ 著
価格:本体650円+税
出版社:KADOKAWA
公式サイト



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