『鬼滅の刃』ノベライズ100万部突破で注目 JUMP j BOOKS編集長が語る、公式スピンオフにかける熱意

j BOOKS編集長インタビュー

j BOOKSはどう読まれているか?

j BOOKSで刊行してきたノベライズ作品の数々。

――j BOOKS読者の年齢は?

千葉:各マンガの読者の平均年齢と近いと思います。ただ性別で言うと小説はマンガよりも女性読者が多いですね。キャラへの理解をより深めたいと思ってくださるのは女性なのかなと。実は『鬼滅の刃』の読者には小学生も多いですが一方で40代女性も多く、はじめは「子どもの分を買っているのかな?」と思いきや頑張り屋の炭治郎が母性をくすぐるらしく、ご本人が読んでいることも多いようです。逆に読者の平均年齢が低いのは『約束のネバーランド』ですね、中高生どころか小学生でも読んでいる子がいます。謎解き、パズル的な感じがよかったのかなと。もしも出せるとしたらみらい文庫でも『約束のネバーランド』は売れそうだと思っています。

――両方出ているタイトルもあるんですか?

千葉:はい、映画ノベライズ『斉木楠雄のψ難』のように両方で出して両方売れるタイトルもあります。みらい文庫は児童文庫棚、j BOOKSはコミックス棚に置いてありますから、読者が意外とかぶらないんです。

――j BOOKS作品の読まれ方の特徴は?

千葉:先ほども言った通り熱量の高い原作ファンが読んでくださることが多く、「編集部の中の人かな?」とわれわれが思ってしまうくらい一話一話について深くレビューを書いてくださる方もいます。最近ではソフトカバーの本でも学校図書館に入れてくれるようになりまして「学校で読んだ」「朝読で読んだ」という人も増えてきた印象があります。

――全国学校図書館協議会の図書選定基準が改訂され、昔は「並製(ソフトカバー)は不可」という一文があったのが削除されて児童文庫などが入るようになったと聞いています。

千葉:年頃の男子だと「文字ものなんて読みたくない」という声もあるでしょうが「観たかった映画のノベライズだから」といった理由で中高生男子が小説を手に取る入り口になれたらとも思っています。たとえば『DRAGON BALL』のノベライズ。実はj BOOKSでは一度もやってこなかったのですが、2019年の『劇場版ドラゴンボール超ブロリー』で初めてチャレンジしました。

――え? ブロリー相手に悟空とベジータがスーパーサイヤ人2! 3! ブルー! フュージョン! と姿を変えながら延々戦っている作品ですよね……?

千葉:映画では戦いながらブロリーが何を考えていたのかまではわかりませんが、心情を描ける小説の強みを活かしてそこをうまく掘り下げられたと思っています。男性にオススメしたい一冊です。

編集部員それぞれが個性を活かす体制に

――千葉さんが2018年6月末に編集長になってから売上が伸びたそうですが、就任以降、何か取り組まれたことはありますか?

千葉:巻数を付けないようにしました。たとえば『ハイキュー!!』は小説がもう11冊出ていて、「11」とナンバリングされています。でも実はj BOOKSの作品はほとんどがどこからでも読める短編集なんです。キャラごとのサブストーリーやちょっとした日常を切り取った短編か中編が1冊に4、5本入っている、というものが基本です。それに「1」「2」「3」と付けてしまうと「1から買わないといけないのかな?」という感覚になってしまいます。ですから最近始まったものは数字を入れず、サブタイトルを入れて各巻ごとに差を付けるようにしています。

 ほかにあるとすれば、私が「週刊少年ジャンプ」編集部を経験していないから逆に俯瞰的に見られると言いますか、しがらみがないのが良いのかなと。それでいて偶然ながら「週刊少年ジャンプ」編集長の中野、ジャンプ+編集長の細野(修平)とは同期でして、企画の可否もその理由も率直に聞けるという。

――対編集部では?

千葉:私はスタッフそれぞれの動きには基本的に口を出さず、助けが必要なときに交渉や調整の手伝いをする、というスタンスです。

――交渉と言うと……。

千葉:たとえば社内調整ですね。j BOOKSは「週刊少年ジャンプ」作品の小説ならジャンプコミックスと同じサイズ、「ヤングジャンプ」作品の小説ならヤングジャンプコミックスと同じサイズという方針で本を作っていますから、棚がないんですね。そうするとオリジナルを出すときや映画のノベライズを出すときに困る。ですから弊社のオレンジ文庫から恋愛ものの新人賞受賞作を出したり、実写映画『かぐや様は告らせたい』のノベライズのときは「映画と原作のファン層は違うだろう」と判断してやはりオレンジ文庫から出させてもらったり、あるいはアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス3』のノベライズは集英社文庫から出しました。そういうときには私が各編集部へ話をしに行っています。

 それぞれの作品に最適なかたちで出せるように、また、それぞれ個性があって得意どころがはっきりしているスタッフが動けるようにするのが私の仕事なのかなと。

――編集部の雰囲気は?

千葉:雰囲気はいいですよ。本の編集部って雑誌と違って個人プレイが多くなりやすいんです。校了だって別々だし、ごはんだって声をかけないといっしょに行かないし。でもうちは自主性を重んじつつも「チーム」だと意識してもらいたいと思って、この前、私が声をかけてみんなで日帰りバスツアーに行きました。集合時間が朝早くて文句を言われましたが、最終的には楽しんでもらえたのかなと思っています。編集部員同士お互いの作品に対するお互いの意見やネット上の意見を共有したりしながら、みんながストレスなく仕事できるように動いています。

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