今もっとも続きが気になる格闘技漫画、『喧嘩稼業』の面白さは“理屈の戦い”にアリ

 こうした読んでいる最中は納得してしまう「理屈」が『喧嘩稼業』には詰め込まれている。本作での戦いは、こうした理屈のぶつけ合い、いわば理屈合戦が繰り広げられるのだ。たとえば「柔道はこうだから、こうすれば片腕を無力化できる」「片腕を無力化されても、柔道ならこういう反撃ができる」といった、各競技の長所・短所に応じた課題が提示され、その課題を解決する理屈が示される。この理屈合戦が非常に面白い。「こんなもんどうやって勝つんだよ!?」からの「ああ! そうやって攻略するのね!」という、謎解きに似た気持ち良さがある。さらにそこにドーピングや毒まで飛び出し、リング外でも共闘や裏切りが繰り広げられ、何がどうなるか予想がつかない。1パンチごとにクリフハンガーがあるような状態で、今もっとも続きが気になる漫画である(あとはキャラクターも魅力的で、非の打ちどころのない男気MAXの空手家から、話がまったく通じない軍隊格闘家まで、個性豊かなキャラしか出てこない)。

 冷静に考えると違うかもしれないが、読んでいる時は「なるほど!」と膝を砕けるまで打ちたくなる。そんな理屈の面白さ、つまりはフィクションの面白さに溢れているのが『喧嘩稼業』だ。連載中の漫画なので評価を下すのは早すぎるかもしれないが、今のところ本作は格闘技漫画の新たな傑作だと思う。

■加藤よしき
ライター。1986年生まれ。暴力的な映画が主な守備範囲です。
『別冊映画秘宝 90年代狂い咲きVシネマ地獄』に記事を数本書いています。

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