FIVE NEW OLD、アニバーサリーを祝う歓喜と幸福の一夜 15年という長い時間をかけて積み重ねてきたもの

ちょうどコロナ禍で10周年を迎え、タイムリーに祝うことができなかったと振り返り、「その時に“祝う”ってすごく大事だなと思った」とHIROSHIは充実した表情を見せる。「月並みですけど、ひとりじゃできませんでした。メンバーがいてくれて、協力してくれる人、場所があって、それを聴いてくれる人、出会ってくれた人、すべてが僕たちの音楽を奏でて、日常で愛してくれた結果、15年が積み重なった。当たり前のことが尊いってことを、15年目で教えてもらいました」――。フロアからの拍手を浴びながら、HIROSHIの言葉はとまらない。「ダメだ、これ以上話してると、(メンバー)一人ひとりにひとことずつ言いたくなる」。そんな彼に、オーディエンスから「いいよ!」と声が飛ぶ。「いいの? 長いぞ、俺の話は(笑)」と言いながら、HIROSHIはメンバーそれぞれに向けて言葉を贈りはじめた。バンド結成のきっかけを作ったHAYATOには「15年前に、諦めずに俺を誘ってくれてありがとう。今も俺の背中をずっと支え続けてくれて、感謝しています」、SHUNには「SHUNくんの言葉がなかったら、俺は何度も音楽をやめようと思っていました。そういう瞬間にSHUNくんがかけてくれる言葉に救われて、俺は今日もこのバンドの真ん中に立たせてもらってます」、そして幼馴染のWATARUには「一緒にいる時間が長くなって、お互い空気みたいに感じてますけど、どこまでも俺に音楽で生きる理由をくれるのはWATARUです」とメッセージ。HIROSHIの正直な心情が表れた言葉が会場の空気を一層あたたかなものにすると、ライブは終盤に向けてさらにボルテージを上げていくのだった。

「未来は明るい!」。HIROSHIが笑顔でそう叫ぶと「Hallelujah」のブライトなサウンドが広がる。レインボーカラーの照明が楽曲のエネルギーを何倍にも増幅させて、歌も演奏もどんどん自由になっていくようだ。続く「What’s Gonna Be?」に「Showdown」と、ハイテンションな楽曲が続いたクライマックス。HIROSHIはアコースティックギターを弾きながら「日常に花を咲かせるというのは、あなた自身を大切にするということです。日常に花を咲かせることができる人は、ほかの誰かのこともきっと大切にできます。お互いそうやってかっこよく生きていきましょう」とメッセージを伝え、バラード「Moment」を歌い始めた。それまで手を叩き盛り上がっていたオーディエンスがじっと耳を傾けるなか、すべての思いを注ぎ込むような絶唱が響き渡り、それをバンドの力いっぱいのプレイが支える。FIVE NEW OLDというバンドの形を象徴するような熱演だった。
その後「いつかまた、どこか音の鳴る場所で」という言葉とともに届けられた「Please Please Please」で本編を終えると、アンコールではHIROSHI以外の3人による軽妙なトークを経て、ライブ2日後の3月21日に誕生日を迎えるSHUNをサプライズでお祝い。そんな和やかなムードのなか、初期曲「Undercover」をオーディエンスの歌声とともに披露すると、ラストは「By Your Side」。イントロのゴスペル調のコーラスから全員の手拍子が重なる。FIVE NEW OLDの15年の歴史と、そのなかでバンドとファンが築き上げてきた絆。つまり、FIVE NEW OLDが生み出してきた最も大事なものを象徴するような光景とともに、ライブはフィナーレを迎えたのだった。


FIVE NEW OLDが歩んだ15年「やっぱりひとりじゃできなかった」 貫き続ける願いと血肉化したスタイル
FIVE NEW OLDが結成15周年を迎えた。2010年に神戸で結成された時から始まったバンドの歩みをまとめた初のベストアルバ…
Number_iの音楽を支えるSHUN(FIVE NEW OLD)が語る、「ギリギリのラインを攻めることができる」理由と濃密な一年
Number_iの楽曲を多く手掛けるFIVE NEW OLDのSHUN。2024年の音楽シーンを沸かせた、影の立役者でもある彼は…