FIVE NEW OLDが告げた新章の始まり 未来への期待を乗せた『Departure Tour』東京公演レポ

FIVE NEW OLDが告げた新章の始まり

 FIVE NEW OLD(以下、FiNO)が全国5カ所を巡る『Departure Tour』東京公演を5月27日にZepp DiverCity(Tokyo)で開催した。本来ならこの日がツアーファイナルだったが、メンバーの新型コロナウイルス感染により、名古屋、大阪はおのおの6月12日と6月17日に振替公演が行われた。

FIVE NEW OLD

 シティポップなど、いわゆるチルな音楽にカテゴライズされることもあれば、SiMが主催する『DEAD POP FESTIiVAL』にも声がかかることがFIiNOの特徴だが、この日のライブでは現行のインターナショナルなポップアーティストが音源ではパーソナルで親密な音像を作りつつ、アリーナクラスのライブではそのキャパに見合ったダイナミックな音作りを行っていることが想起された。パンクを出自に持つFIiNOの地力は、音楽トレンドに再びロックの要素が発現してきた今、後押しになるのは間違いないだろう。

 フロアは、想像以上に若い男性ファンが多かった印象。暗転し、エレクトロ×アンビエントなSEが流れ、メンバーが登場し、SEのプロローグと繋がるように「Rhythm of Your Heart」でスタートした。サポートキーボーディストがいることで、WATARU(Gt/Key)がギターに専心できているように見えた。しかし、鍵盤ももちろん弾くし、SHUN(Ba)が生ベースとシンセベースをスイッチする場面や、HAYATO(Dr)が生ドラム以外にサンプリングパッドを駆使する場面も後々目撃することになる。以前よりさらに必要な音をフレキシブルに操っているのだ。

SHUN

 そして何より、HIROSHI(Vo/Gt)の自由と癒やし、そして笑顔をオーディエンスから引き出すキャラクター。エネルギッシュなヒーラーという彼の個性はやはり無二だ。音源の何倍も力強いビートでアップリフティングな「Hallelujah」。モータウン的な親しみやすさ、リファレンスにしたというThe Style Councilの「Shout To The Top」にも通じる、光に向かって意気揚々と歩くような気持ちが聴き手に満ちてくる。さらに裏拍でクラップを自然に打ちたくなる「What’s Gonna Be?」と、冒頭の3曲で洋邦混交フェス、特に『SUMMER SONIC』のステージが頭に浮かんだ。アップライジングな海外アクトが屋内ステージに立つイメージだ。オーディエンスもFiNOを邦楽、洋楽と分けて聴いていないだろう。

 少し懐かしくもライブ定番のレパートリーはグッとブラッシュアップ。温かいエレピのイントロを長めにアレンジした「Liberty」は、音源でのODD Foot Works Pecoriのラップ部分もHIROSHIの無邪気さを感じる声質で定着した印象。ラップ部分でのシンベも効いている。さらに2018年の時点で早くも80’s感を導入していた「Stay(Want You Mine)」も、コーラスがブラッシュアップされたことで、ライブでの聴き応えが増している。80’sテイストは「Too Good To Be True」に接続され、彼らにとってはルーツの一つだろうが、今聴くとすごくしっくりハマる。その上、演奏や演出が洗練され、曲の持つアトモスフィアにすんなり入り込めるのだ。

 HIROSHIが、「改めてこんな時世でも足を運んでくれてありがとう」と謝辞を述べ、この日、朝は大雨だったのも関わらず、午後には晴れたことも曲のタイトルにもかけて、同ツアーで初披露となる新曲「Happy Sad」を披露。新しいバンドロゴが美しい透過光に浮かび上がる洗練された演出が、BPM速めでありつつ、ドリームポップテイストもあるサウンドとマッチしている。さらにアルバムでも新鮮な原点回帰を感じさせたギターロック「Summertime」もライブ全体の流れにフックを付けている印象だ。ブライトなサウンドだが、力強いリズム隊の力量がこうした楽曲ではやはり大きな武器になる。

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