Lucky Kilimanjaro 熊木幸丸、“生きる=大変”な時代に音楽ができること 「安心できる心の置き場になってほしい」
「刹那的なものは苦手、物事は続いていくのが面白い」
ーー「コーヒー・セイブス・ミー」は歌詞に〈Soul Friendly〉という言葉も出てくるし、この作品を象徴するような曲ですよね。この曲はどのように生まれた曲ですか?
熊木:「返礼を求めることなく人に何かをあげる」という行為に、自分が今まで生きてきて得ていた価値観とは違うエネルギーを感じたことがあって。当たり前にやっている挨拶や、誕生日プレゼントをあげること、そういうことが実は思っている以上にすごい力を持っているということを、年々感じるようになっているんです。それこそが、お互いの存在を承認し合っている、お互いがお互いに対して「その場所にいていい」という思いを伝えるメッセージになっているような気がして。「これが愛なんじゃないか?」と思ったんです。そういう気づきからスタートした曲ですね。
ーー本当に、この作品の大きなテーマが表れている曲ですよね。
熊木:お互いが何かを交わし合うことに、すごい価値や光のようなものを感じて。それを1度、強調した方がいいと思ったんです。それは一見普通のことで、忘れられている光なんですけど、「実はそれがめっちゃ大事だったよね?」ということを書きたかった。
ーーこの曲は声の重なりも美しいですよね。
熊木:少し教会っぽさを意識しましたね。Vampire Weekendの新しいアルバムを聴いていたのもあって、「あの温かさがいいな」と思って。
ーー教会っぽいサウンドと、「コーヒー・セイブス・ミー」というタイトルの馴染もいいですよね。ここでは「ゴッド」ではなく「コーヒー」ですが(笑)。「フロリアス」や「恋あおあお」の話もそうですが、曲のタイトルの付け方も少しずつ変化している部分がありそうですよね。
熊木:たしかに、あるかもしれないですね……。タイトルへの思いは『Kimochy Season』の頃と絶対に変わっている気がします。なんというか、お客さんやメンバーから1回、突っ込みが入りそうなタイトルをあえて付けているような感じがしますね(笑)。「このタイトルにしたらどう思うかなあ?」みたいな、そこにあるワクワクを求めているような気がする。でもそこに理由はない気がします。普通につけるのがつまらなくなってきて、「なんかやっちゃおうかな」と思っている時期なのかもしれません。
ーーでも、「どう思うかな?」と思いながら相手に渡すというのは、まさにプレゼント感がありますよね。
熊木:そうですね。ミュージシャンだから元々ある性格だと思うんですけど、最近は特にタイトルで1回引っ掛けたいんですよね。「このタイトルで1エピソード話したい」みたいな(笑)。
ーー最後を飾る「メロディライン」は、この曲で『Soul Friendly』が終わることはすごく特別で大切なことなのだと感じました。
熊木:どんな人でも、キツいときや傷ついたときに聴く曲ってあると思うんですよ。そういう「戻ってくることができる場所」として、ひとつのメロディがあるといいなと思って。そういうアイデアから着想して作った曲ですね。この曲全体がほぼひとつのメロディで構成されているんですけど、そのメロディだけで作ることが、そもそもアイデアに対して誠実だなと思ったんです。
ーーこの曲は〈また逢おうね〉と歌い出されますけど、「メロディライン」という曲の先に聴き手一人ひとりの人生があるような感じがします。いつでもこのメロディに帰ってくることができるし、この曲があるから、また聴き手は外に出ていくことができる。そんな曲だと感じました。『Dancers Friendly』と『Soul Friendly』という2作品を締め括る曲としても素晴らしい曲だなと思います。
熊木:さっきの「恋」と「愛」の話に近いかもしれないですけど、『Dancers Friendly』は何かを求め続けて外側に動くイメージで、『Soul Friendly』はむしろ、「ここまでが自分の居場所です」という空間を確保するイメージがあるんです。そのふたつを交互に行ったり来たりすることが、人間の人生で行われていることだと思うんですよね。その中でこの「メロディライン」という曲は、『Soul Friendly』の中でいちばんダンスミュージック的なサウンドの曲だけど、「自分の居場所、安心できる心の置き場になってほしい」という願いがあります。
ーー『Dancers Friendly』と『Soul Friendly』の2作品には熊木さんから聴いている人への眼差しを強く感じるし、Lucky Kilimanjaroはずっと聴き手に対して何かを伝えようとしてきたバンドだと思うけど、聴き手へのコミットの仕方も、少しずつ変化しているようにも感じます。
熊木:「生き続けてほしい」と思っているんです。楽しく、ずっと。僕は刹那的なものが苦手なところがあって。物事は続いていくのが面白いと思っているんです。一瞬で終わってしまうものに対して、美しさは感じるけど、自分の価値観はそこにはないなと思う。生き続けてくれ、やり続けてくれ、踊り続けてくれーーそういう思いが前提にあるから、「メロディライン」では〈また逢おうね〉と歌うし、「フロリアス」みたいな曲も生まれるんだと思います。刹那と人生は違うからこそ、「居場所」に対して言葉を紡がなくてはいけない。だからこそ『Soul Friendly』を作りましたし、それでも「動く」という行為に対して賞賛もしたいからこそ、『Dancers Friendly』を作りました。
ーー今、時代的にも「生き続ける」ことに対してのヘヴィさが増しているからこそ、こういう表現が出てきているという部分はあると思いますか?
熊木:そうですね……うっすらあるかもしれません。なにがという話でもないですけど、ざっくりと「みんな大変そうだな」と思うんですよね。ざっくりと、みんなちょっと辛そう、みんなちょっと傷ついていそう。そんなふうに思うことはあって。それはずっとそうだったのかもしれないですけど、それを感じることは多くなっていると思います。世界情勢とか、自分のモードとか、いろいろな要因があると思うんですけど。でも、傷つかないことは難しいと思うんですよ。だから「傷つかないために」ではなくて、むしろ「傷ついてしまうからこそ」、そこに対してのケアをどのようにしていくのかが、それぞれの分野に求められていることだと思っていて。それは政治もそうですし、音楽表現もそこに対してできることはあると思うんですよね。
なんとなく、でも確かな、自分や他の人の「傷つき」の実感があって、そこをマッチョなやり方ではなく、ケアする必要は絶対にあるよねと思う。マッチョなものも、そうなってしまった傷つきはたしかにあるから。そこも含めて「今一体何が起きているのか?」を考えたいし、何かできないかなと思うことはあります。どれだけ自分がそこにコミットできるかはわからないけど、自分が音楽を奏でる場所が、みんなが少なくとも「ここにいれるな」と思ってくれる場所としてあれればいいなと思います。
ーー今のお話を聞いて改めて、Lucky Kilimanjaroが「バンド」であることの大切さもすごく感じました。
熊木:そうですね、僕が引き受け過ぎない感じというか。僕自身、そんなに引き受けられない気がしますから。僕にそんな強さはないし、メンバーや、踊ってくれるお客さんがいるからこそ、できている表現だなと思います。
■リリース情報
デジタルEP『Soul Friendly』
2024年10月30日(水)配信リリース
01.LIGHTHOUSE
02.フロリアス
03.恋あおあおと
04.いつもの魔法
05.コーヒー・セイブス・ミー
06.メロディライン
https://lnk.to/soulfriendlyNR
デジタルEP『Dancers Friendly』
2024年7月24日(水)配信リリース
01.Dancers Friendly
02.かけおち
03.High
04.Find you in the dark
05.獣道 兵が踊る
06.Ran-Ran
https://lnk.to/lk_dacersfriendlyNR
■ツアー情報
『Lucky Kilimanjaro presents. TOUR “YAMAODORI 2024 to 2025”』
2024年11月17日(日)金沢 EIGHT HALL
OPEN 17:00/START 18:00
2024年11月23日(土)高松 MONSTER
OPEN 17:00/START 18:00
2024年11月29日(金)広島 CLUB QUATTRO
OPEN 18:00/START 19:00
2024年12月1日(日)熊本 B.9 V1
OPEN 17:00/START 18:00
2024年12月2日(金)札幌 Zepp Sapporo
OPEN 18:00/START 19:00
2024年12月22日(日)仙台 SENDAI PIT
OPEN 17:00/START 18:00
2025年1月13日(月・祝)大阪 Zepp Osaka Bayside
OPEN 17:00/START 18:00
2025年1月19日(日)福岡 Zepp Fukuoka
OPEN 17:00/START 18:00
2025年1月26日(日)名古屋 Zepp Nagoya
OPEN 17:00/START 18:00
2025年2月16日(日)千葉 幕張メッセ国際展示場 4、5 ホール
OPEN 15:30/START 17:00
<チケット料金>
金沢、高松、広島、熊本公演:¥5,600
札幌、仙台、大阪、福岡、名古屋公演:¥6,000
千葉公演:¥7,800
※スタンディングのみ販売の公演あり。詳しくはオフィシャルHPを確認。
企画制作:dreamusic Artist Management,Inc./VINTAGE ROCK std.
TOTAL INFORMATION:VINTAGE ROCK std.
TEL:03-5787-5350(平日12:00~17:00)
WEB:https://vintage-rock.com
■関連リンク
オフィシャルサイト:https://luckykilimanjaro.net/
Lucky Kilimanjaro Official Fanclub「LKDC」:https://fc.luckykilimanjaro.net/