m-flo×鈴木真海子、身勝手にジャッジする/される“息苦しさ” Lovesシリーズで照射した現代に漂うモヤモヤ感

m-flo×鈴木真海子が語る“Loves”

 他者からの評価や、自分自身への無意識なジャッジメント。SNS時代の息苦しさをやさしく、鋭く、ユーモラスに描き出す「Judgement?」は、m-floがフィールドワークとしている「LOVESシリーズ」の一環として、新たに迎えたフィーチャリングアーティスト鈴木真海子とのコラボレーションによって生まれた楽曲だ。

m-flo loves 鈴木真海子 / "Judgement?" Official Music Video

 chelmicoとしてm-floと共演した「RUN AWAYS」から約3年、今度はソロアーティストとして参加した鈴子真海子が、メロウなラバーズロックにアンニュイでありながらもどこかトゲのある言葉を乗せていく。m-floの2人と鈴木真海子、それぞれが抱えていた“モヤモヤした気分”から始まったこの楽曲は、甘くてビターで、どこか懐かしく、そして何より現代的。言葉と音の“掛け合い”で紡いだこの一曲が、聴き手の心を静かに揺らす理由を、3人にじっくり聞いた。(黒田隆憲)

期待するのは自由だけど、それに沿わないとすぐ叩かれる(☆Taku Takahashi)

ーーまずはm-floのお二人が、今回chelmicoのMamikoこと鈴木真海子さんをフィーチャーした経緯から聞かせてもらえますか?

☆Taku Takahashi(以下、☆Taku):今回は「レゲエの曲を作りたい」と思ったのが最初ですね。中でもラバーズロックをやってみたくて、ボーカリストは誰が合うかVERBALと話していたときに、「まみちゃんがいいね」と意見が一致して、そこからオファーさせてもらいました。

鈴木真海子(以下、鈴木):めちゃくちゃ嬉しかったです。またお声がけいただいたのもありがたかったし、ちょうど私もラバーズロックをやりたいと思っていたんです、実は。

ーー☆Takuさんがラバーズロックをやろうと思ったきっかけは?

☆Taku:ミュージックバーで三木道山さんと飲んでいたときに、マスターが素敵なレゲエをいろいろ流してくれて。それを聴いて「ああ、やっぱレゲエって気持ちいいな」と。もともと自分でもレゲエっぽいトラックは作っていたのですが、その場で道山さんが「こういう感じの曲も(m-floで)やってみたら?」と言ってくれて。

 最初は「自分にできるかな?」という不安もあったのですが、「タクならできるよ」と道山さんが背中を押してくださったんです。それで気持ちが一気に高まり、後日VERBALに「レゲエの曲やってみない?」と提案したら「いいじゃん!」と即OKをもらいました。なので、きっかけは完全に道山さんですね。

ーートラックも、Aメロの切ないコード進行や、途中でリズムが変化するドラマティックな展開など、一見シンプルに聴こえるけど仕掛けがたくさんあるように感じました。

☆Taku:もともと僕は、曲の中で展開を作るのが好きなタイプのトラックメイカーなんです。それに今回は真海子ちゃんとVERBALが、どんな展開でもしっかり歌で説得力を持たせてくれるだろうなと。ボーカリストとしての強さがあるから、こちらもどんどん展開をつけたくなったし、作っていてすごく楽しかったですね。

ーーラバーズロックとしての懐かしさもありつつ、モダンな雰囲気もしっかりあって。そこにm-floらしさを感じました。

☆Taku:さっき話したバーで、マスターが懐かしいレゲエや、あまり聴いたことのないダブなどいろいろかけてくれて。その空気感がすごく良くて、「この感じをサンプリングっぽい質感で再現できたら面白いな」と思ったんです。ただ、当時のレゲエってちょっとラフで、ローファイなサウンドも魅力のひとつじゃないですか。それを今の高音圧でクリアなサウンドと、どう共存させるかはかなり「塩梅」を意識しました。レゲエの歴史をちょっと掘ると、ダブサイレンや宇宙っぽいシンセ音みたいな、実験的な要素もたくさん出てくるんですね。そういう音の遊びが、結果的に「宇宙」や「未来」っていうm-floらしい世界観ともつながったと思います。

ーー「Judgement?」という曲名からも、「他者からの評価」や「自分で自分をジャッジしてしまう感覚」をテーマにしていると感じました。こうしたテーマを選んだ背景についても聞かせてもらえますか?

鈴木:最初に3人で打ち合わせをしたとき、「最近どう?」みたいな雑談から始まったんです。そしたらそれぞれなんとなく気持ちが「停滞」しているというか、「うーん……」みたいな微妙な気分を共有していることに気がついて。そこから「甘いサウンドにちょっとトゲのある言葉を乗せていく」という方向で書き始めました。結果的には、受け取り方によっては恋愛の歌にも聴こえるような、そんな仕上がりになったと思います。

 あと、最初に構成を話し合った段階で、「掛け合いもやりたいですね」という話になり、そこからイメージが膨らんで、「早く作りたい!」という気持ちがどんどん高まってしまって一気にワーッと書き上げたんです。「ここはVERBALさんが歌って、ここは私で」みたいな感じで、リリックに「M」とか「V」とか印までつけ、「こんな感じでお願いします!」とお渡ししました。

VERBAL:実は、最初に「ラバーズロックをやりたい」とTakuから聞いたときには、正直どんな感じになるのか全然イメージが湧かなくて。ちょっと2人の様子を見ていたところもあったんです(笑)。でも、真海子ちゃんが最初に書いてくれたリリックを見た瞬間、「あ、めっちゃいいじゃん!」となって。しかも、「ここ歌ってください」と細かく指示も入っていたから、イメージも湧きやすかった。

鈴木:えー、すみません(笑)。

VERBAL:いやいや(笑)、本当に助かったんだよ。「なるほど、こういうフロウなのか」と一気に道筋が見えて、そこからは自然にリリックも浮かんできたので。

☆Taku:最初に「ラバーズロックをやるよ」と言ったときから、実はブーンバップっぽいビートでいくつもりだったんです。でも、それはあえて2人に伝えていなかったんです。VERBALだったら、このテンポのビートなら目をつぶっていてもリリック書けるだろうなって(笑)。

VERBAL:テンポ自体は確かに書きやすかったのですが、いつも通りに踏んでいくと、なんかちょっと違う気がしてて。しかもTakuが作るとやっぱり王道のレゲエやラバーズロックには絶対にならないんですよね(笑)。Taku流のレゲエになることはわかっていた。しかも、ちゃんとトラックの「塩梅」で僕と真海子ちゃんの声を引き立ててくれているし、真海子ちゃんが先にざっくりと大まかなリリックを描いてくれたし、ほんと大船に乗った気持ちでいましたね。

鈴木:嬉しいです。

☆Taku:2人が上げてくれた歌詞を読んで、個人的にすごく共感できました。たとえば最近は、SNSが本当に窮屈に感じるようになってきて。いろんな人が勝手に批評したり、「この人はこうだ」って決めつけたり。期待するのは自由だけど、それに沿わないとすぐに公開処刑のように叩かれる。もちろん「ホワイトな社会」が全部悪いとは思わないけど、ちょっと息苦しいなって感じることはあって。その空気感を2人がうまく代弁してくれたように思えて、すごく響きましたね。

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