総再生4800万回突破のサックスプレイヤー ユッコ・ミラー、H ZETTRIOと奏でる至福の音楽 ライブ直前に語り尽くす!

ユッコ・ミラー×H ZETTRIOのコラボ

 昨年12月11日にリリースされたアルバム『LINK』は、サックス奏者のユッコ・ミラーとピアノトリオ・H ZETTRIOのコラボレーションによって完成した。開放的に踊れるリズム、スタイリッシュなハーモニー、胸に深く染み入るメロディなど、多彩なサウンドが活き活きと輝いている作品だ。そして「ユッコ・ミラー feat. H ZETTRIO」の演奏を体感できるライブが、4月17日にBillboard Live OSAKA、4月20日にBillboard Live TOKYOで開催される。リスペクトし合う4人の演奏は、観客に至福の時間を届けるだろう。公演への意気込みとアルバム『LINK』の制作で感じた手応えをユッコ・ミラーが語ってくれた。(田中大)

PE'Zの大ファンだった高校時代を経て、H ZETTRIOへの“突撃メール”でコラボ実現

――アルバム『LINK』を振り返って、あらためて感じることはありますか?

ユッコ・ミラー(以下、ユッコ):踊れる曲がたくさんあって、H ZETTRIO色に染まっているアルバムだなとあらためて思いますね。H ZETT Mさんが作る曲は美しいメロディでスリリングであると同時に、遊び心もあるんです。そういう曲を演奏できる嬉しさもある作品になりました。

――H ZETTRIOとのコラボレーションは、どういう経緯で実現したんでしょうか?

ユッコ:私、高校の頃からPE'Zの大ファンで、PE'Zばかりを聴いていたんです。昨年「次のアルバム、どうしようかなあ?」と考えている時にまたPE'Zを聴いてみたら、ジャズを知らない人でも楽しめるのが魅力的で。「こういうアルバムを作れたらいいなあ」と思って、H ZETTRIOさんに突撃メールをしました。

――なかなか無茶なスケジュールでの制作だったとお聞きしています。オファーしたのが昨年の夏で、「年内にリリースしたいです」ということだったんですよね?

ユッコ:はい。連絡をしたのは7月くらいでしたね。H ZETTRIOさんの事務所を検索して、「一緒にやっていただけませんか?」というメールをしました。

――もともと面識や交流があったわけではないんですね。

ユッコ:そうなんです。でも、たまたまH ZETTRIOのみなさんがテラス・マーティンのBillboard Live TOKYOでのライブに私が飛び入りゲスト出演した時に観てくださっていたそうで、「あの子だよね?」「ぜひやりたいね」ということだったそうです。

――アルバムを一緒に作るにあたって、どのようなお話をしました?

ユッコ:H ZETTRIOさんの音楽が大好きなので、“H ZETTRIO”という感じのサウンドに私が加わったアルバムにしたかったんです。そのイメージをお伝えしたところ、作曲は各々アルバムの半分ずつやって、編曲はH ZETTRIOさんが全部やるということになっていきました。

――今までのアルバムとは異なる制作の進め方ですよね。

ユッコ:これまでは作曲とアレンジを全部自分で考えていたんですけど、今回は私が作った曲も編曲を全部H ZETTRIOさんがやってくださったので、「なんて素晴らしいんだろう」と(笑)。アレンジって本当に難しくて、作曲のほうが簡単だと思うくらいなんです。私は自分のなかに「こういう感じのベースラインで、こういうリズムで……」というのが降ってこないとなかなかアレンジできないんです。今後はいいイメージが降ってこない限り、どなたかにアレンジをお願いするのもありだなと思いました。

――Mさんが作曲した「Dragon Funk」は、ライブでお客さんが手拍子をしながら盛り上がりそうですね。

ユッコ:MV撮影の時も「とにかくみんなで動こう!」となって、すごく動いています。全身で表現という感じですね。撮影も刺激的でした。私、音楽を全身で表現することしかできないんです。じっとしながら吹くことができないというか。

――MVは、金の龍が登場するのも印象的です。

ユッコ:「Dragon Funk」なので、ドラゴンが登場するんです。YouTubeでMVを公開したのが1月だったので、お正月のおめでたさもあって、金の龍になりました。撮影の時はひとりずつのプレイの映像を撮ったんですけど、みなさんの動きもかっこよかったです。弾きながら炸裂しているMさんの動きもすごかったですね。H ZETTRIOの方々は演奏はもちろん、“魅せる”ということに関しても素晴らしくて尊敬しています。

「Dragon Funk」Official MV / ユッコ・ミラー feat. H ZETTRIO

サックスと出会うまでは「私は一体何者なんだろう?」とずっと思っていた

――Mさんとユッコさん各々の作風を明確に感じられるアルバムになりましたね。ユッコさんが作った5曲は全体的にサスペンス映画、ハードボイルド作品のような緊迫感、スリリングさを感じます。

ユッコ:私は実生活を曲にすることしかできなくて。曲を作っていた時期が、まさにそういう感じだったんです。「危険なアリバイ」を作った時期もスリリングな日々を送っていました(笑)。「Free Fall」も、本当にフリーフォールしちゃうような感じでしたね。作った時、「宇宙空間に大きな穴が開いていて、そこに落ちていく」みたいなイメージがあったんです。

――ユッコさんは、緊迫感を楽しむタイプの人なのかなと想像するのですが。

ユッコ:おっしゃる通りです(笑)。普段と違うことが起こると、嫌なことだったとしてもちょっとワクワクしちゃうので。同じところにずっといることができなくて、違うところに行きたいし、誰もやっていないようなことをやりたいんです。そういうものが曲に表れているんだと思います。

――ユッコさんは穏やかで大人しいですけど、型破りなエピソードもたくさんある人ですからね。グレン・ミラー・オーケストラのライブの終演後に楽屋口で待ち構えて演奏を披露したのは高校生の時でしたっけ?

ユッコ:はい(笑)。

――キャンディ・ダルファーのサイン会の時にサックスを吹いて、後日、ライブにゲスト出演することになったのも、なかなかぶっ飛んだエピソードです。

ユッコ:そうなんです。いろいろぶっ飛んでいまして(笑)。そういう部分を音楽を通して発散しているのかどうかはわからないんですけど、自分を表現できるのがサックスなんですよね。サックスと出会うまでは「私は一体何者なんだろう?」とずっと思っていて、やりたいことも特技も何もなかったんです。でも、高1の時にサックスと出会って、「やっと巡り合えた!」「これは私の武器だ!」と思いました。

――サックスを始める前は、ピアノを習っていましたよね。

ユッコ:ピアノは3歳からやっていたんですけど、全然楽しくなかったんです。ピアノとサックス、一体何が違ったんでしょうね? でも、リコーダーは好きでした。小学校3年生くらいの時に学校の授業でリコーダーを習うじゃないですか。その時も「なんかめっちゃ楽しい!」「すごく表現したくなる!」と思いました。私、リコーダーが上手だったんです(笑)。音楽のテストの時、先生がいる部屋に行って1対1で聴いていただいたことがあって、「カントリー・ロード」をリコーダーで吹いたんです。私が吹き終わったら先生がぽろぽろと涙を流して、「感動した」って言ってくださって。そこで「私、才能あるのかな?」と思いました。

――呼吸で音を出して表現する感覚が、ユッコさんに合っていたんですかね。

ユッコ:どうなんでしょう。金管楽器も同じように自分の口に合っているかどうかというのもあると思うので、そういう点でもサックスは私に合っていたのかもしれないです。高1で吹奏楽部に入ったんですけど、もともと入る気はなくて、友達に「吹奏楽部に入りたいからついてきて」と言われて、「いいよ」と。でも、当時の私はサックスというものを知らなくて、「めんどくさいなあ」っていう感じだったんですけど(笑)。

――(笑)。

ユッコ:でも、音が出た瞬間に衝撃が走りました。そういう出会いって、どこにあるのかわからないものなんでしょうね。昔の私みたいに「自分って何なんだろう?」と思っている人は、いろいろやってみるのがいいんだと思います。

――衝撃の出会い以来、サックスに夢中の高校生活でしたか?

ユッコ:はい。勉強もせずに、ずっとサックスの練習をしていました(笑)。

――(笑)。そんな高校時代に好きだったのがPE'Zなんですね。H ZETTRIOの3人との年齢差はかなりあるんじゃないですか?

ユッコ:そうですね。でも、年齢差は感じないです。一緒に音楽をやっていると、とにかく楽しいですから。

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