Lucky Kilimanjaro、2度目の日比谷野音公演も雨と共にダンス 未来を見据えた“今”を提示したステージ

ラッキリ、2度目の日比谷野音を観て

 4月21日、日比谷野外大音楽堂にて、Lucky Kilimanjaroがワンマンライブ『YAON DANCERS 2024 supported by ジャックダニエル』を開催した。Lucky Kilimanjaroが同会場でワンマンライブを開催するのは2021年4月以来、約3年ぶりとなる。3年前の野音の日は雨が降っていたが、今年も雨。でも今年も3年前と同じように、雨なんてむしろ気持ちよく感じるくらいに踊った。

Lucky Kilimanjaro

 ライブの幕開けを飾ったのは「Super Star」。ラッキリにとって最初の作品となる2015年リリースのEP『FULLCOLOR』の1曲目を飾る楽曲である。大瀧真央(Syn)、柴田昌輝(Dr)、松崎浩二(Gt)、山浦聖司(Ba)、ラミ(Per)の5人がステージに立ち演奏を始めると、熊木幸丸(Vo)は歌いながらステージ袖から姿を現した。ドラマチックな始まりを演出するというより、むしろ、日常から野音に音楽が流れ込んでくる……そんなイメージを連想させるライブの始まり。とてもラッキリらしいはじまりだ。曲の途中で熊木は「ダンスは自由です。自由に踊れますか?」と問いかけ、観客たちはその問いに思い思いのやり方で応える。あたたかみのあるバンドサウンドが、東京のド真ん中に表れた楽園、とでもいうような不思議な存在感を持つ日比谷野音に映える。柔らかなバンドの演奏と、風の匂いや雨の肌触りが、野外の開放感の中で心地よく混ざり合う。

熊木幸丸
熊木幸丸
大瀧真央
大瀧真央

 曲と曲がまるでDJミックスのようにして接続されていくのはラッキリのライブの醍醐味だ。この日も、はじまりを告げた「Super Star」から「350ml Galaxy」が見事なアレンジで接続されていく。その曲と曲の連なりの狭間で熊木は「『Super Star』の頃から応援してくれている人もいると思うし、新曲で知ってくれた人もいると思うし、今日初めてライブに来た人もいると思う。それぞれの人生があるし、それぞれの音楽の楽しみ方がある」というふうに告げる。人はそれぞれの孤独を抱えて生きているーーダンスミュージックの高揚感の中で、その事実を祝福してくれるのがラッキリの音楽だ。そして「人は一人ひとりみんな例外的な存在なんだ」と知ったうえで、音楽の中でささやかに人と人がつながり合うことの幸福もラッキリは捨て去らない。

Lucky Kilimanjaro

 「350ml Galaxy」の途中、一度ステージ袖にはけた熊木は飲み物の入ったグラスを手に持って再び登場。〈うまい酒が飲みたい〉というフレーズを歌いながら熊木がグラスを掲げると、観客たちもそれぞれが手に持った飲み物を掲げる。乾杯。分かち合う喜び。優しくて楽しい光景が広がる。

ラミ
ラミ
柴田昌輝
柴田昌輝

 イントロから歓声が上がった「風になる」、躍動感があり、なおかつメロウな陶酔感もある「楽園」、観客たちの手拍子にも彩られた「またね」……などなど、名曲たちが次々に投下されていく。バンドの演奏が本当に素晴らしい。圧が強すぎない、でも物足りなさは一切ない、絶妙な力加減によって生み出される演奏。ドラムとパーカッションのコンビネーションや生ベースとシンセベースの使い分けなどに象徴的なサウンドの多彩さ。どんなに大胆にポップな曲でも、繊細に練り上げられ、奏でられている。だから、踊る側も安心して身を任せられる。セットリストでは8曲目に当たる「Favorite Fantasy」が奏でられる頃には、ライブがはじまった時には夕方でまだ明るかったはずの空はいつの間にか真っ黒になっている(空の色は徐々に変化しているはずなのに、ある瞬間に突然「夜になった!」と気づくのは野音の醍醐味のひとつだ)。そんな闇夜の中で、しかも降っては止んで……を繰り返しながら「もういっそ降るわ!」と空が腹を括ったかのように強く降り始めた雨の中で、ラッキリの素晴らしい音楽に乗せて踊る人々を、照明は照らしていく。

山浦聖司
山浦聖司
松崎浩二
松崎浩二

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