米津玄師、BUMP OF CHICKEN、RADWIMPSらが歌う〈地球〉の言葉に宿るもの 『君たちはどう生きるか』主題歌などから考察

 米津玄師が、宮﨑駿のスタジオジブリ新作長編映画『君たちはどう生きるか』に書き下ろした主題歌「地球儀」。タイトルにもなった“地球儀”というモチーフだが、米津の過去曲を振り返ると“地球”という言葉が登場する楽曲は数多い。彼はこれまでどのように“地球”をとらえ、描いてきたのだろうか。

 遡ると、1stアルバム『diorama』に収録された「ディスコバルーン」で〈光って回る地球儀から振り下ろされて〉〈光って回る地球儀が落ちた〉と歌っている。世間からの疎外感やこの世界への無関心さが伝わってくる歌詞だ。そして、2ndアルバム『YANKEE』の「ドーナツホール」では、〈環状線は地球儀を 巡り巡って朝日を追うのに/レールの要らない僕らは 望み好んで夜を追うんだな〉と歌う。本流とは真逆へ向かうスタンスで描かれており、この頃の米津にとって“地球”は、馴染みづらい場所の象徴だったのかもしれない。

ハチ - ドーナツホール , HACHI - DONUT HOLE

 しかし、3rdアルバム『Bremen』から潮目が変わる。「雨の街路に夜光蟲」では〈二人でだったら行けるよね 地球の隅っこへ〉と丸い地球には存在しないはずの“隅っこ”という言葉で親密さを歌い、「メトロノーム」では〈これからも同じテンポで生き続けたら/地球の裏側でいつか/また出会えるかな〉と別れの先にある希望のように“地球”について描いている。

 “地球儀”というジオラマから“地球”へと描写が変わった点も興味深い。ひとりだけで音楽を制作していた時期を経て、外部から演奏者や編曲者などのサポーターを招くうちに、徐々にこの世界と馴染めるようになったという心境変化が表れているのではないだろうか。“地球”は、米津にとって“自由に解釈できる場所”という認識が強まったのかもしれない。

米津玄師 - 地球儀 Kenshi Yonezu - Spinning Globe

 そして、最新曲の「地球儀」である。〈飽き足らず思い馳せる 地球儀を回すように〉〈飽き足らず描いていく 地球儀を回すように〉と表現されるのは、宮﨑駿のイメージを通して再構築された米津自身の創造の風景だ。この世界のメタファーとして再び用いられた“地球儀”。それを“回す”という表現によって、彼の脳内で繰り広げられる“創造”のイメージが浮かんでくる。

 思い返せば、米津はハチ名義でリリースした「ワンダーランドと羊の歌」にも“地球儀”を登場させている。ここで歌われる〈右手の上で回る地球儀を/左手の灯で照らそうか〉とは、まさに「地球儀」に通ずる歌詞表現だ。見え方は変わったかもしれないが、米津にとって“地球”は創造の源として、彼の心にずっと宿り続けてきたと言える。

ハチ MV「ワンダーランドと羊の歌」HACHI / Wonderland to Hitsujinouta

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