ハロプロらしい歌詞とは何か? 〈愛〉と〈地球〉と〈腹へった〉が同居する楽曲の魅力

相手との関係の中で育まれる「愛」を歌う

 ハロプロの楽曲には、「愛」や「愛する」という言葉もよく出てくる。ここで言う「愛」や「恋」を想像上のものとしてではなく、他者との関係性の中で育むものとして描くことが多い点も大きなポイントだ。失恋でも恋愛の途中経過でも、あくまでも相手ありきで歌われる「愛」や「恋」。例えば、モーニング娘。’20の「LOVEペディア」では、主人公がセオリーのない恋愛に悩みながらも楽しむ様子が描かれている。〈知りたい もっと Everybody 愛 Yaeh〉という歌詞に象徴されるように、全体として「コミュニケーションの中で相手を知ること」に重きが置かれている楽曲となっている。

モーニング娘。'20『LOVEペディア』(Morning Musume。’20 [Lovepedia])(Promotion Edit)

日常生活に根ざした言葉から問う「人生」や「生き方」

 さらに、「人生」という言葉が使われることも多い。1人の人間としてどう生きるか、どうありたいかを問いかける歌詞の多さも「ハロプロらしさ」と言えるのではないだろうか。時に強いメッセージで自立した人間の強さやカッコよさを表現するアプローチではなく、ハロプロの場合はあくまで日常生活に根ざしながら「人生」や「生き方」に言及している点が特徴だ。

Juice=Juice『全部賭けてGO!!』Promotion Edit

 例えば、11月23日リリースのJuice=Juice「全部賭けてGO!!」では、Aメロで〈会いたい時はSNSを開けば Hmm キミの キミの日々(log)が元気くれる〉と日常の一場面を歌いながら、サビ前では〈“好き”を生きて “好き”を極めて でさ ついて来い『時代』〉とこれからの生き方について言及している。

モーニング娘。'22『I WISH』Promotion Edit

 また、モーニング娘。の「I WISH」では、〈くだらなくて笑える メール届いた〉というどこにでもありそうな一風景から、紆余曲折ある人生の豊かさやすばらしさを楽曲全体で表現している。

 およそ四半世紀にわたる歴史の中で着実に積み重ねられてきた、楽曲の「ハロプロらしさ」。等身大の女性の生き様や、相手との関係の中ではぐくむ愛を、リアルな情景や心情とともに描き出す歌詞は年月を経ても色あせることがない。これまで何気なく聴いていた楽曲も、改めて歌詞や言葉に着目して聴いてみることで、新たな魅力や解釈を発見できるからこそ、ハロプロは多くの人を惹きつけ続けているのではないだろうか。

※1:雑誌『ダ・ヴィンチ』2020年2月号 No.310 特集『ハロプロが女の人生を救うのだ!』(KADOKAWA)

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