imase、春野、なとり……ウィスパーボイスの歌声はなぜ人気? 現代に支持される傾向を考察

 こうしたシンガーソングライターの登場には、スマホの登場によってネット文化が大衆化したことが大きく関わっていると考えられる。ウィスパーボイスや中性的な歌声といえば、“歌ってみた”などネット文化から生まれた多くの「歌い手」たちのイメージもあるが、そうしたカルチャーが大衆化したことによって、柔らかく中性的な声が一般のリスナーにも受け入れられるようになったのではないだろうか。

 また、近年のあらゆるトレンドの傾向として“チル”が重要になっている点も、歌声の変化との関連性があると言える。10代、20代を中心に流行の発信地となるTikTokでは、静かな夜を連想させるような“エモい”動画や、心休まる空間に身を任せるような“チルい”動画がバズりやすい。よってソウルフルで熱い歌声や、キャッチーでポップな音楽よりも、メロウで静か、かつ切なくなるような音楽/歌声が好まれる傾向にあるのだ。

 さらに、ウィスパーボイスがオートチューンとの相性が良いことも、流行を後押ししている。限られたリスナーの間で人気のあったHIPHOPが、ここ数年でライトな層にも広まった影響により、シンガーソングライターの中でもHIPHOPライクなトラックメイクをする人口が増えている。楽曲制作をする上で、より相性の良さを追求した結果、ウィスパーボイスが多用されるようになったのは必然と言えるだろう。

 今回紹介したシンガーソングライターは、TikTokも主なプラットフォームとして活用しており、固定のファンが多くついている。それだけウィスパーボイスで歌うアーティストが、今の10代・20代から支持されていることが分かる。これまであまり聴いていなかったという人にも、これを機に彼らの歌声に耳を傾けてみることをおすすめしたい。

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